ミレニアル世代のやる気を引き出すには シンガポールの事例




「人こそ最大の資産」とは企業の常套句であるが、社員を大切にする気持ちを実際の行動に移すとなると上手く繋がらない企業が多い。30代半ば以上の世代はこうした現状に疑問を持たないが、それより若いミレニアル世代(ピュー研究所によると1981年~1996年生まれで現在22~37歳に該当)は好ましいと思っていない。2018年の保険会社エーオンによるリサーチ結果(2018 Aon)から、シンガポールでフルタイム勤務するミレニアル世代のうち、仕事に打ち込んでいると回答した者は56%に留まっている。ミレニアル世代が労働力の中核を占めている(largest generational segment of the workforce)現状を考えると、驚くべき統計結果である。アジア地域全体で見ると、シンガポールでの仕事に対する傾注度は59%(fifty-nine percent)で、これは香港と並んでアジア諸国の中で最下位であった。エーオンは社員の忠誠心を「会社に対する心理的投資の度合い」と定義づけ、社員に以下の質問をして調査を行った。

  1. 職場で最善を尽くす意欲があるか。
  2. 自分が働く会社について肯定的発言をするか。
  3. 長期にわたり在籍する意志はあるか。

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ミレニアル世代の無気力さは、人材の採用から定着を図る上での大きな足かせとなり、企業業績を直撃する悪夢を招いてしまう。ギャラップ社の調査(Gallup study)の中で、アジア地域については上述のエーオンと全く同じ結果となった。社員の傾注度がいかに重要かを数値化し、上位25%の企業部署を下位25%と比較して、以下の通り優れたパフォーマンスを見せたことを示している。

    1. 離職率が24~59%低下
    2. 顧客忠誠心が10%上昇
    3. 販売効率が20%上昇
    4. 収益性が21%上昇

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2020年までにミレニアル世代の3人に2人(two out of three millennials)が転職を希望している中、人材の採用と定着は大きな懸案事項である。この世代が職業を選択する際、最大の決定要因として給与・諸手当を挙げているが、企業がうわべだけの愛社精神を求めて金に物を言わせるとしたら、浅はかである。雇用する際には、給与以外の要素で待遇改善を図っていくことを銘記すべきである。

ミレニアル世代のニーズに応えることで、長期的な帰属意識を醸成し、選ばれる企業となることができる。報酬を除き、社員が企業を選択する際の理由として挙げているトップ6のうち上から順に4つの理由(four of the top six reasons)は以下の通りである。

  1. 仕事に意義を見出せる。
  2. 専門的な能力開発のトレーニングプログラムがある。
  3. 企業が社会にインパクトを与えている。
  4. 強い目的意識がある。

仕事に意義を見出せるかについて、ミレニアル世代の女性の方(Female millennials in particular)が男性より優先度が高いという点は、女性の活躍に力を入れて行きたい企業には示唆に富む結果である。こうした背景を考えると、ミレニアル世代のうち86%(86 percent of millennials)が企業の成功は利益だけでは測れないとしている調査結果は納得いくものである。これらの調査結果をうまく活用することで、企業はミレニアル世代の帰属意識を高めると同時に生産性も改善することができる。

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CSRアジア・シンガポール事務所では先日、ミレニアル世代のコミットメントを促す双方向型のトレーニングを活用する社員参画キャンペーンを立ち上げた。同国の環境水資源省が2018年を気候アクションの年(Year of Climate Action)と宣言したことをうけ、年4回のトレーニングを通して個人および職場レベルで気候変動への対応戦略を立てることを目指す。企業はこのトレーニングを業界もしくはCSR戦略と合うよう調整していくこともできる。自分の会社が社会・環境問題の解決に努めていると見るミレニアル世代はわずか13%である(13 percent of millennials)。このギャップを活用し、ミレニアル世代を取り込む参画型の社風を創り上げることでライバル企業から一歩先を行くチャンスとなるのだろう。

ヘンケル・シンガポールは他社に先駆けて気候に関連したさまざまな社員参画型の取組みを提供している。第1ステップとして、入社に際して各々が気候アクションに宣誓している。さらに120人がサステナビリティ大使としてトレーニングを受け、その後学校に出向き、生徒に対して自宅で環境に優しい行動につながるヒントを教えている。ヘンケルの気候への取組みは、コミュニティ全体に行動を広げて行く波及効果をもたらしている。

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人材は企業の成功を推し進める無形資本であり、現在は目的意識が高いミレニアル世代が中核を担っている。しかし目的は待っていても生まれない。企業は社員の仕事がチーム、企業、社会全体の中でどのような意味を持つのか、その「理由」を掘り下げて行く必要がある。ミレニアル世代の期待に応え、帰属意識を高めると共に生産性を上げるには、意欲を高めていくよう語りかけて行く必要がある。参画型トレーニングを皮切りに、社員のエンパワーメントを図ることが効果的である。

CSRアジア・シンガポール事務所の気候アクションへの社員参画型キャンペーンの詳細については、テス・ゼネスまで tess.zinnes@csr-asia.com

引用文献:

2018 Trends in Global Employee Engagement, AON

The 2016 Deloitte Millennial Survey: Winning over the next generation of leaders

The 2017 Deloitte Millennial Survey, Apprehensive Millennials:  seeking stability and opportunities  in an uncertain world

2016 Gallup Q12 Meta-Analysis Report

Pew Research Center defines “millennials” as anyone born between 1981 and 1996 (ages 22-37 in 2018).

執筆:テス・ゼネス