エコ工業団地の国際標準化は持続可能な成長を促進するか




エコ工業団地(EIP)1の普及は、環境・社会的に持続可能な経済成長の推進力となっている。その数は2000年の50から現在は約250へと世界的に増加しているが、EIPの詳細について国際的に共通な定義づけは未だに存在しない状況である。

今年初めに世界銀行と国連工業開発機関(UNIDO)、ドイツ国際協力公社は「エコ工業団地のための国際的フレームワークAn International Framework For Eco-Industrial Parks’」を発行し、EIPの構成要素を明記し、EIP発展に向けた枠組みを示している。以下の通り画期的な内容となっている。

  • 経済・社会・環境面でのパフォーマンスおよび工業団地管理における要件を網羅している(下図1 参照)。
  • EIPの必須条件を明記し、各国の枠組みと調整可能なパフォーマンス要件を特定して提示している。
  • フレームワークを発展させ、評価指標として活用する(従来の工業団地の実績を要件に照らして金・銀・銅と評価する等)具体例を提示している。
  • 先進国、経済移行国、途上国すべてに適用可能である。
  • 新規EIPの計画と開発を支援すると同時に、既存の工業団地のEIPへの転換や最適化を促進する。

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図1:出典: 世界銀行World Bank. エコ工業団地の概要

このフレームワークの最大の売りである国際的標準化は、官民セクター双方にとり有用である。既存のツール(existing tools)を補完し、EIPの規模や所在地に関わらずベンチマーキングが可能となるためだ。量的・質的な必須条件と要件を明記することで、地域に展開する各業界が持続可能な開発目標(SDGs)に貢献し、パリ協定に対する各国の約束草案の達成を後押しすることができる。

 世界中に展開するEIP

EIPは循環型社会と産業共生(industrial symbiosis)の概念をベースに計画・実施され、環境やエネルギー・水・資材といった資源の課題を地域の企業と協働して解決していくことを目指している。企業業績の改善を図りつつ、環境へのインパクトを最小限に抑えることが狙いである。2世界各国でその成果が確認されている。

韓国の蔚山・尾浦と温山工業団地Ulsan Mipo and Onsan Industrial Park):政府からの1,480万米ドル規模の投資を得て、地元企業は総額5.2億米ドルに上る資金を投じ、環境配慮型製造と蒸気と副産物の供給による産業共生を推し進めている。この投資により、二酸化炭素排出量やその他の汚染物質を大幅に削減すると同時に、5.54億米ドルのコスト削減と915億米ドルの収益を生み出した。

デンマークのカルンボーにおける産業共生型工業団地(Kalundborg Symbiosis:高価値の副産物(蒸気と熱)と低価値の副産物(水)の交換により、工業団地は年間約9,900万米ドルのコスト削減を達成し、同時に雇用を生み出し、年間24万トンの二酸化炭素排出量を削減し、リサイクルと再利用により300万トンの節水を達成した。3

中国の上海化学工業団地(SCIP)(Shanghai Chemical Industrial Park (SCIP):工業団地内の石油化学企業間の産業共生により効率化が図られ、2008年から2011年に141.2%の増益を達成した。例えばポリ塩化ビニル(PVC)は塩素とエチレンの反応生成物であるが、SCIPでは上海苛性ソーダ・PVCプロジェクトからBASFに余剰塩素を送り込み、製品組み立て用の接着剤などを製造する。副産物の塩酸はPVC施設に戻され、エチレンと反応させてPVCを生成する。コストの削減と塩素利用の倍増により、経済的利益のみならず環境的利益も生み出した(Lowe,2001)。

EIP内で操業する理由とは

EIP内で操業する経済的利益としては、増収や増益、雇用の創出、競争力、さらに地域の産業向け投資へのアクセスなどが挙げられる。それ以外にも以下のような利点がある。

  • 資源および廃棄物の管理が改善する(コスト削減にもつながる)。
  • 環境配慮型のサプライチェーンを実現し、資源の制約を解消する。
  • 収入源を多様化する。
  • 資源コストの上昇に対して強靭なインフラを実現し、気候変動リスクに適応する。
  • 消費者が憂慮する環境および社会的課題に対応する。
  • 労働力の供給源にアクセスする。
  • ビジネス連携のチャンスが広がる。
  • 投資資本にアクセスする。
  • 環境・社会的リスクを低減し、ブランドの失墜を防ぐ。
  • 安定した操業の許可を取りつける。
  • 規制当局からの罰則を回避する。
  • 治安が改善し、犯罪を予防する。

多様なステークホルダー・グループから環境・社会的インパクトを低減し、より責任ある資源消費に向け圧力が高まる中、EIPの標準化がもたらすメリットは計り知れない。

企業にとってのメリットとは

企業は統合されたEIP評価フレームワークを活用することで、工業団地内での操業を決定する際の指標となり、環境配慮型の製造技術と製造工程への投資方法について手がかりを得ることができる。工業団地の管理について以下の要件を網羅している。

  • 国家および国際的基準を適用する。
  • インフラに投資し、パフォーマンスを監視する。
  • 地域の企業のリターンを最大化する。
  • 防災およびリスク管理能力を高める。

さらにフレームワークを導入することで、国内要件が未整備の場合には国を超えてベストプラクティスと足並みを揃えることができ、工業団地の管理に左右される日々の操業に注目することで説明責任を果たすことにつながる。

ビジネスを超えて

産業振興に付随する社会・環境問題への解決策として、EIPの重要性はますます高まっている。さらに地域コミュニティと企業、工業団地、そして都市全体を統合する包摂性を促進することにつながる。

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図2: 出典: UNIDO. Industrial-urban symbiosis

「エコ工業団地のための国際的フレームワーク」を標準化することで、工業団地や経済特区、国家間の競争力を高めるEIPのベンチマーキングが進むことになる。官民セクターの協働を促進し、工業団地が単なるコンプライアンスから踏み込み、積極的に継続的改善に取り組むことにつながる。EIP国際フレームワークの活用により、有益で包摂的、持続可能な産業化に弾みがつくことになるのだ。

画像出典: 3r-solucion.es

1. An ecoindustrial park is a community of manufacturing and service businesses seeking enhanced environmental and economic performance through collaboration in managing environmental and resource issues

2. Indigodev.com

3. We-economy.net

4. Lowe, E.A. (2001) Eco-Industrial Park Handbook for Asian Developing Countries.

執筆:アーロン・スローン