SDGsに取り組む企業への政府と国連の後押し




持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む企業の数は増えているにもかかわらず、PwCとKPMGが発行した報告書によると、SDGsに関する企業のレポーティングの現状は決して明るいものではない。

PwCは17カ国から6セクターにわたる470社を超える企業のサステナビリティ報告書を分析し、「SDGレポーティング・チャンレンジ2017(PWC’s “SDG Reporting Challenge 2017)」として発行した。世界規模でリサーチを展開し、SDGsに関する各社の優先度を把握し、重要性の高い目標に対する企業報告の質を検証している。同様の調査を行ったKPMGは先日報告書「SDGsの報告方法(KPMG study “How to report on the SDGs”)」を発行した。その対象は、2016年度のフォーチュン・グローバル500を基に、総収益で世界のトップ250社にのぼり、15セクターにおよんだ。

PwCとKPMGの分析によると、SDGsへの貢献について信頼できる内容の企業報告書としては不十分であることが分かる。

  • 積極的にSDGsに取り組む企業は世界中で増え、KPMGの調査対象となった企業の75%、PwCの調査では62%が報告書の中でSDGsに言及している。しかしながら、ビジネス戦略としてSDGsに取り組んでいる企業ばかりではない。SDGsに取り組みながら重要な目標を優先していない企業があり、優先している場合でもその手法は一貫していない。この中にはインパクトを特定するためバリューチェーンのマッピングや、企業のCSR活動とSDGsの関連づけ、さらにはそれを企業のマテリアリティ評価プロセスに盛り込むことなどが含まれる。

バリューチェーンのアプローチはGRI、UNGC、WBCSDGold Standardなどから広く優良事例として活用されている。なぜなら企業はSDGsへのプラスとマイナス影響の全体像を把握し、最大のビジネスチャンスとリスクを特定することができるからだ。

企業が事業を展開する地域が抱える開発課題を考慮せず、容易に達成できる目標を設定した場合、事業の継続を担保する社会的操業許可や、国内規制の先を見据えるチャンスを逃すことになる。

  • 大多数の企業はSDGsの17目標を支える169のターゲットについて解説せず、SDGsへの貢献の進捗状況を測定するパフォーマンス指標についての報告もしていない。

こうした企業はSDGsに取り組む熱意を示しながらも、信頼性ある有意義なコミットメントを表明することができていない。

これらの調査結果を悲観的に捉えれば、企業は従来通りのビジネスを展開しながら評判を高めるために表面的にSDGsに関っているのだと解釈できる。逆に楽観的な見方として、開発目標やターゲットを運用する上で不可欠な報告フレームワークやパフォーマンス指標、データの地ならしが進まない中で、企業はSDGsの達成に向けて果たしうる役割を徐々に理解しているのだと捉えることもできる。国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)によると、SDGsが掲げる169ターゲットの半数以上は数量的に明記されていないため、すぐに測定できる訳ではないのだ。

UNGCとGRIの報告書「目標とターゲットの分析(“Analysis of the Goals and Targets”)」では、企業が関連するSDGsのターゲットについて報告する際に活用できる定性的および定量的指数を含む既存の開示ツールのリストが掲載されている。本報告者の目指すところは、SDGsのターゲットに対する企業の理解を深めることだ。この報告書に目を通すことで、企業はSDGsのターゲットが掲げる曖昧な表現や方向性を理解するのみならず、各ターゲットに適用できる多くのサステナビリティ測定フレームワークを把握することができる。「開発目標6:安全な水と衛生へのアクセス」の中のターゲット6.4では「2030年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取および供給を確保して水不足に対処するとともに、水不足に見舞われる人々の数を大幅に減少させる」ことを目指している。このターゲットについて企業が報告する際には、GRIやCDP、CEOウォーター・マンデートの「企業の水に関する開示のガイドライン」、世銀の世界開発指標(WDI)、UNCTADなどさまざまなフレームワークの指標を活用することができる。企業が責任をもってSDGsにコミットするよう、進捗状況を測定していく共通の基準が必要である。

企業が事業を展開する国において、政府が優先的に取り組むSDGsに効果的な貢献を図っていくには、中央政府の基準に各社のサステナビリティ基準の足並みを揃える必要がある。国境を超えて事業を行う多国籍企業は、さまざまな優先課題のバランスをとるよう地域的もしくはグローバルな視点に立たなければならない。「重要課題の測定イニシアチブ(Measure What Matters Initiative)」は、足並みが揃わない政府と企業の測定フレームワークがもたらす弊害を概説している。インドでの一貫性を欠く水管理の測定を例に挙げ、企業の報告書は取水レベルに焦点を当て、政府はインフラと水利用の状況に着目する一方で、地球規模では水へのアクセスと衛生に目標を定めている現状を報告している。

SDGsの達成に向けた企業の貢献に多大な期待が寄せられる中、企業が目に見える行動を起こすよう促す動きはまだ鈍い。ビジネス戦略にSDGsを取り込む方法については急速な進展が見られるが、コミットしていく戦略の構築に不可欠なデータや基準が整備されていないのだ。信頼性のある、定量化された方法で企業がSDGsへの貢献を報告できるよう、政府と国連のリーダーシップが期待される。

CSRアジアの支援内容とは

CSRアジアはさまざまなレベルでSDGsに取り組む企業に支援を行っている。その支援内容は、SDGsがビジネスにどのような意味をもたらすか理解を深めるために社内のステークホルダー向けにトレーニングを行うほか、ビジネス戦略にSDGsを取り込むためのベンチマーキングと分析、さらにはインパクトの測定や進捗状況の発信などと多岐にわたる。ステークホルダーを集めての研修や、国際開発分野のパートナーとの連携、さらに最も関連ある課題を理解しベストプラクティスを導き出すための独立したリサーチも手がけている。

執筆:ヘレン・ルース