東南アジアのインクルーシブな農業関連ビジネスと貧困削減




CSRアジアはオックスファムと共に民間セクターのインクルーシブ(包摂的)ビジネス戦略の構築に取り組み、3年にわたるプログラムの最終段階にさしかかった。しかしこれはGRAISEAプロジェクトの第一ステップを終えたに過ぎない。スウェーデン国際開発庁の支援を受けた本プロジェクトを通して、私たちの調査は深まり、複数のオピニオン・リーダー的な報告書を発行し、多くの企業との連携を果たした。今後も東南アジアでより多くの企業を取り込み、貧困の削減や開発、そして持続可能な開発目標(SDGs)への貢献を果たして行きたい。

インクルーシブ・ビジネスとは、企業にとって商業的に採算の取れる方法により貧困を撲滅することを目指す。企業のバリューチェーンを通して貧困層に働きかけ、参画を促すことで、貧困を解消しつつ、バリューチェーンの競争性を高めながら商業利益を上げるチャンスとなる。

世界人口の三分の二は貧困状態にあり、大多数は基本的サービスへのアクセスが阻まれている。中でも脆弱な立場にあるのが女性だ。さらに貧困層は人権侵害の被害者となるリスクが高い。多くの場合、貧しい人々の自助努力だけで経済状況を好転させるのは難しい。このためインクルーシブ・ビジネスの取組みを展開し、大手企業のバリューチェーンの中で貧困者のために経済的チャンスを創出することを目指している。

貧困の削減に向け、民間セクターは雇用と富の創出により多大な貢献を果たしてきた。小規模ビジネスのために雇用やサプライチェーンでの機会を提供し、人々の経済的チャンスを創出してきたのである。民間セクターの果たしうる貢献はますます広がっている。貧困を削減し、貧しい人々の参画を促し、インクルーシブ・ビジネスの成功事例を拡大展開し、さらに開発の取組みを後押しする企業が増え続けている。

企業はインクルーシブなビジネス戦略を上手く活用することで、主要企業のバリューチェーンに貧困層を取り込むことを目指している。その役割は農家を含む生産者、サプライヤー、流通業者、仲介業者、従業員、事業主、さらに顧客など多岐にわたる。こうしたビジネス戦略により、バリューチェーンの競争力を高め、企業にとってビジネスチャンスにつながる一方で、事業を展開するコミュニティの経済・環境・社会的状況を改善することができるのだ。

リサーチ結果から、インクルーシブなビジネス戦略を成功させるには以下の3要素が有効であることが分かる。

  • 貧困層の生活状況を改善する:所得と雇用の機会を増やす、知識・スキルを高める、市場アクセスを確保する、小規模ビジネスを育成する、起業を後押しする、インフラを強化する、製品・サービスのアクセスを確保する、貧しいコミュニティを支援するプレミアム価格を活用する。
  • コミュニティに目に見える価値を創造する:主要企業の効率的なバリューチェーンに生産的な方法で低所得コミュニティを組み込む、所得を増大する、生活状況を改善させる、より効率的かつ強靭で競争力のあるバリューチェーンを構築する。
  • 企業にとっての商業的な成功:競争力と生産性、品質を高め、コストを削減し、差別化を図ることで収益を高める、貧困層を取り込むことで市場を拡大し長期的な経済価値を創造する。

インクルーシブなビジネス戦略を活用し、貧困層に新たな機会を創出するために、企業はバリューチェーンのさまざまな段階でいかに働きかけて行くかを検証する。以下の生産的な方法により、社会的に疎外された人々をバリューチェーンに組み込むことを目指している。

  • バリューチェーン内の貧困者に対して雇用の機会を創出する
  • 生産性の向上と所得の増大を目指して、スキル養成・教育・品質改善に投資する。
  • 地域経済を多角化し、新規の市場機会を特定することで人々の副収入を確保する。
  • バリューチェーンの効率性と有効性を高めて貧困層のマージンを増やし、バリューチェーン全体の競争力の向上に貢献する。
  • 起業を支援し、有益な製品・サービスを提供する新規の小企業に投資することで、企業のバリューチェーンを強化する。
  • 企業方針や基準、組織体系、インフラを整備・強化することで、貧困層の雇用や製品市場、流通へのアクセスを向上させる。
  • 貧困層でも生産、流通、消費しやすい手頃な製品・サービスをイノベーションで生み出す
  • バリューチェーンの透明性と情報へのアクセスを高め、バリューチェーン全体の利益が平等に配分されるように図る。

以下の原則を押さえたインクルーシブなビジネス戦略をバリューチェーンで展開することで、貧困層を含む社会的に疎外された人々に最も恩恵をもたらし、主要企業に競争優位を生み出すことができる。

  • インクルーシブ・ビジネスの取組みがコミュニティに受け入れられようステークホルダー・エンゲージメントを図り、貧困層の目指すところに合ったチャンスを生み出す。
  • バリューチェーンに沿って多様な働きかけを検討し、全体として貧困層とコミュニティに最大の利益をもたらすよう図る。
  • 汚職や不正行為、人権侵害により貧困層がさらに搾取されないよう、インクルーシブなビジネス戦略のガバナンスを徹底し、透明性を確保する。
  • 効果的なインクルーシブ・ビジネスの取組みにより、貧困層とコミュニティに目に見える測定可能な成果がもたらされるよう監視と評価を行う。
  • インクルーシブ・ビジネスの取組みを計画・遂行する際は柔軟性をもつ。貧困層のニーズを満たす取組みがすべて成功するとは限らないこと、場合によっては取組みを変更したり断念したりする必要があることを理解する。
  • インクルーシブなビジネス戦略が企業に商業的利益をもたらす成功事例となるには、拡大発展できる内容が必要である。時間と共に取組みを拡大展開するよう長期的な計画を策定する。

「コアビジネス」戦略の一環として、社会・環境的な価値を創造すると同時に、企業のバリューチェーンの競争力を高めるチャンスは少なくない。民間セクターは貧困を削減し、市場を形成し、さらに新たな機会に向けて機運を高めることでプラスの社会的影響力を発揮する大きな力をもっているのである。

インクルーシブ・ビジネスに関するCSRアジアの最新レポートはこちらから https://goo.gl/AMKvHf

企業とSDGsに関するCSRアジアのレポートはこちらから https://goo.gl/AogdjV

執筆:リチャード・ウェルフォード