SDGsと農業関連産業による成長の機会




DNV GLと国連グローバルコンパクト、サステニア(DNV GL, the United Nations Global Compact and Sustainia)は先週、2018年度版の「Global Opportunity Report 2018」を発行した。4年目を迎える同レポートは、国連の持続可能な開発に向けた17目標(SDGs)を活用し、起こりうるグローバルリスクを包括的に検証している。17目標のどれ1つを取っても世界で達成可能な地域はなく、以下の表が示す通り、複数の目標はどの地域においても達成不可能であるとの大胆な予測を立てている。

一方で健康、食料、水、エネルギーの4分野では、主要なグローバルリスクをビジネスチャンスに替えられると指摘している。目標とする2030年までの達成が困難と予測される開発目標10「不平等の是正」、開発目標12「持続可能な生産消費形態」、開発目標13「気候変動対策」、開発目標14「海洋と海洋資源の保全」に関連する業界に着目し、ビジネスと社会にもたらすチャンスとインパクトを調査している。

 

 

 

上に挙げた4分野と農産業には明らかな相関関係がある。アジア地域では全雇用数の約半数が農業と結びつき、アグリビジネス(農業関連産業)はSDGsの達成に大きな推進力となる。業績が伸び、うまく規制されたアグリビジネスは拡大する食料需要に対応し、開発目標1「貧困の根絶」および開発目標2「飢餓の撲滅」に向けた国際的な取組みを加速化させうるのだ。ii

オックファムが東南アジアで展開するジェンダー変革と責任あるアグリビジネスへの投資プログラムであるGRAISEA development programについて、CSRアジアは2017年に研究レポートを発行した(英文レポートはこちらからアクセスstudy)。この中で、アグリビジネスはSDGsの全17目標を対象とするのではなく、事業との関連性が高い分野に焦点を当てて協働して取り組むよう勧告している。CSRアジアの同レポートが挙げる優先分野と、Global Opportunity Report 2018の調査結果および提言を比較すると、その内容の多くが重複している(下図参照)。

アグリビジネスの強みを活かしてSDGsとつながる

上の図表は、以下の2項目に照らして、ASEANのアグリビジネスにとり優先度の高い順にSDGsの17目標を並び替えている。

  • アグリビジネスと各ターゲットとの関連性
  • アグリビジネスが各ターゲットに貢献できるインパクトの度合い

表の中の枠が大きいほど、アグリビジネスとの関連性が高く、SDGs達成への影響力が大きくなる可能性を示している。Global Opportunity Report 2018が特に着目した開発目標10,12,13,14には点線で囲みをつけた。

アグリビジネスはいかにSDGsに取り組み、関連するリスクを把握し、チャンスを活かすことができるか。CSRアジアとGlobal Opportunity Report 2018からの提言を以下にまとめる。

SDGsの達成に向けたアグリビジネスの貢献策

 アジア地域の不平等を是正するには、農家の生産性と生活を向上させ、人権を尊重し、ジェンダー変革の推進策を後押しし、生活賃金を保証するアグリビジネスが有効である。

SDG達成に向けた貢献策:

• 小規模生産者を市場に橋渡しする

• 最も脆弱な立場にある人々の天然資源へのアクセスを確保する

• 最も脆弱な立場にある人々が居住する農村部での雇用を創出する

• 関税を引き下げる(輸入国が悪影響を被ることがないよう予防する)

• 輸出の機会を創出する

土地の劣化や土壌肥沃度の悪化、持続不可能な水使用、魚の乱獲、海洋環境の悪化はすべて天然資源の劣化を招き、食料供給力を脅かすことになる。今後需要が見込まれる水、エネルギー、食料に対応するには、より持続可能な生産と消費形態に変えていく必要がある、

SDG達成に向けた貢献策:

• より環境負荷が低く、栄養価と安全性の高い食事に切り替えることで、消費者がより健康的で持続可能な生活様式を取り入れるよう啓発する

• 包装ソリューションを改善し、損傷物をなくし、廃棄物を削減する

• 生産に要するリソースを削減する

• 収穫後作物の取り扱いについて、現代的な方法を従業員に教育する

• 土壌を保全し、高品質の作物を確保する最新の農業技術を農家にトレーニングする

• サプライチェーンに沿って生産プロセスを再考する

Global Opportunity Report 2018 事例紹介:

アメリカのbext360 

Bext360は機械学習と人工知能を活用するソリューションで、高品質のコーヒー製品を生産者から直接調達し、ブロックチェーン技術を活用してコーヒー豆の仕入先と生産者へ誰がいくら支払ったかを記録する。サプライヤーや小売業者、消費者は、サプライヤーチェーンの最深部に位置する生産農園に対して正当な報酬が支払われていることを確認できる。

Global Opportunity Report 2018事例紹介:

インドネシアのBiteback 

Bitebackは食用昆虫から油を抽出する技術を開発した。餌や水、土地をほとんど必要とせず、温室効果ガス排出量も微量な昆虫は、パーム油とは比較にならない持続可能性を誇る。同じ土地面積で計算した場合、昆虫は一年で油やしの38倍に匹敵する油を生産することができる。昆虫油は環境にやさしく、健康にもよい。ほとんどの食品業界が油を活用しているため、健康面でのメリットは大きい。身体によい脂肪酸、ミネラル、ビタミンが豊富、低コレステロールであり、殺虫剤や肥料を必要としない昆虫油は、まさに人にも地球にも両得なのだ。

 大多数のASEAN諸国は多くの農業人口を抱える農業国であるため、アジア地域の食料安全保障に対する最大の脅威は気候変動であろう。気候変動がもたらす悪影響により、特に小規模農家を含む何百万人もの生活が脅かされることになる、

SDG達成に向けた貢献策:

生産のあらゆる局面でのカーボンフットプリントを削減する

サプライチェーン全般にわたるエネルギー効率を改善する 

二酸化炭素排出量削減目標を設定する

革新的で包摂的な低炭素・気候スマート型の製品・サービスを促進する 

気候変動適応方針を整備し、事業やサプライチェーン、コミュニティの強靭性を高める

地球上最大の生態系である海洋および沿岸部は、人々の安寧、栄養、地球規模の食料安全保障にとり不可欠な生態的サービスを提供している。

SDG達成に向けた貢献策:

廃棄物およびプラスチック汚染の削減と清掃について啓発する

小規模生産者の認証を奨励し支援する

マングローブの保全と植林を支援する

魚粉の代替生産に焦点を当てる

水産養殖の改善プロジェクトで小規模生産者の機会を拡大する 

持続可能な水産養殖業を促進し、サプライチェーンの透明性および企業に納入する魚の管理を改善する

Global Opportunity Report 2018事例紹介:

アメリカとカナダのGreenWave 

GreenWaveの垂直型複合養殖システムは、海藻やホタテ貝、ムラサキイガイを海面に浮かべたロープで栽培しながら、海底のカゴで牡蠣やアサリを養殖し、年間1エーカー当たり海藻10~30トンと、貝類25万個を収穫する。陸上植物と比べて5倍の二酸化炭素吸収量を持つ海藻は二酸化炭素の固定に貢献し、肥料や水なども必要としない。水柱を有効活用し、強靭で多様な生態系を作っている。GreenWaveはこの養殖システムの拡大を目指し、2万ドルの準備費用で、あらゆる船主とパートナーシップを結ぶ用意がある。

Global Opportunity Report 2018事例紹介:

アイスランドのMatorka 

アイスランドのMatorkaは、野生魚養殖に起因する環境への悪影響を低減すべく陸上養殖を行っている。近隣の地熱発電所からの余剰温水を活用し、二酸化炭素を排出しない養殖場で、抗生物質やホルモン剤、化学物質を投与しない魚の健康に配慮した養殖を実現した。Matorkaは現在3,000トン級の多種養殖システムを構築しており、廃水や未使用の有機物を活用する更なる循環型養殖を目指している。海での生簀と比べ、Matorkaの陸上養殖は汚染や野生魚の遺伝子組み換えとは無縁である。

CSRアジアのコンサルティング業務

CSRアジアは以下のようなアグリビジネス向けコンサルティング業務を展開している。

  • SDGsの理解を深めるための社内ステークホルダー向けトレーニングの提供
  • SDGsと関連する、持続可能な開発に関する課題の研究および情報の提供(出版物・記事・イベント)
  • SDGsの特定分野についてソートリーダーになりたい方に資料等を提供
  • インパクトの測定および進捗状況の報告を支援
  • SDGsに照らして事業戦略および業務を分析し、隔たりやチャンスを特定する
  • 焦点を当てるべきSDGsと、有意義な活動を特定する
  • SDGsを支援する戦略と行動計画の策定

詳細についてはカレン・ポン(karen.pong@csr-asia.com) またはレベッカ・ウォーカー・チャン(rebecca.chan@csr-asia.com) まで。

参考文献:

Agribusiness and the SDGs: How the Agribusiness Sector in ASEAN can embrace the Sustainable Development Goals

Agribusiness in ASEAN: Making the Case for Smallholder Inclusion

出典:

i. Global Opportunity Report 2018 – DNV GL, the United Nations Global Compact and Sustainability

ii. Agribusiness rules lag in agriculture dependent countries – World Bank

執筆:カレン・ポン