5千億ドルの投資を呼び起こす「Doing Good Index」




フィランソロピーの卓越性を追求するアジアン・フィランソロピー・アンド・ソサエティ・センター(CAPS:Centre for Asian Philanthropy and Society (CAPS))が1月中旬に発行した新たな「Doing Good Index(良き行い指標)」によると、アジアのフィランソロピスト(慈善家)は持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて5,000億米ドルを超える資金を投じることができる。

Doing Good Indexは、アジアの15カ国を対象に、インパクト投資や慈善的寄付を含む社会的責任投資に対して、プラスおよびマイナスに作用する規制や制度的インフラを指標ベースで検証する独特の取組みである。アジア全域から1,500を超えるNGOや非営利活動法人、社会的企業がDoing Good Indexに協力していることで、アジア各国の潜在的リソースを呼び起こし、慈善的投資の呼び水になるとCAPSは見ている。米国ではGDPの2%を慈善的寄付に充てると設定しているが、アジア地域で同水準の社会的責任投資が実現した場合には5,070億米ドルに匹敵する。これはアジア各国に対する開発援助(ODA)総額の11倍にあたり、SDGsの達成に必要とされる年間1.4兆米ドルの三分の一にのぼる規模となる。

この潜在的投資を呼び起こすため、Doing Good Indexは慈善家や、奉仕団体、インパクト投資家が活動を展開するアジアでの状況について詳述している。信頼性や透明性、ガバナンス、人的資本、調達方針に焦点を当て、ソーシャルセクターの機運を高めるべく新たなデータを提供している。

調査の結果、慈善的寄付につながる環境の醸成度に応じて、アジア各国を以下の通り4グループに分類している。民間の金融投資と慈善的寄付につながる要因を4つの補助指標にまとめ、ソーシャルセクターの発展と慈善的寄付の促進に向けてアジアで各国政府が導入している政策を具体的に挙げている。

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Source: Doing Good Index 2018

主な調査結果

租税・財政政策

慈善的寄付への課税控除の限度額および控除率が決め手となる。調査に協力した団体の96%が企業寄付には課税控除が重要だと回答した。政府は企業寄付への歓迎を表明し、企業の慈善活動を奨励し、所得の有効活用を後押ししながら、その控除率は最低のミャンマーの0%から最高はシンガポールの250%と国により大きなばらつきが見られた。

高い控除率は歓迎される一方、寄付できる収入に限度額を設定することで相殺される。制限を設けていないシンガポールでは、控除率を新たに引き上げたことで寄付金が25%も急増した。各国政府の財政状況に合わせてアプローチを微調整する動きがアジア全域で見られるとDoing Good Indexは報告している。

規制

煩雑な規制が認定を阻む。規制を巡る状況はアジア各国で大きく異なる。非営利組織として認定を受ける場合、スリランカやマレーシア、シンガポールでは1~2の要件を満たせばよいが、中国やタイでは10もの要件が待ち受けている。さらに認定に要する時間も最短の中国では1カ月であるが、香港では1年もかかる場合がある。より透明で効率的な認定プロセスにより、ソーシャルセクターへの参入を刺激し、公平な条件に照らしての認定が可能となる点をレポートは指摘している。

エコシステム

グッドガバナンス(優れた統治)が主流となったが、キャパシティ・ビルディング(能力構築)を支援する必要がある。社会的ニーズに応える製品・サービスを提供する組織をCAPSはSocial Delivery Organizations (SDOs)と名づけている。レポートによると、このSDOsに取締役会を設置することが新たな規範となっている。しかし取締役にふさわしい専門性を兼ね備えた人材の確保に苦慮するSDOsが多く、中でもインドではSDOsの41%、ベトナムでは31%がビジネス専門家の人材不足にあえいでいる。さらにドナー国からキャパシティ・ビルディングの支援を受けていると回答した組織は28%にとどまった。

調達

政府との契約でイノベーションを促進する。入札者に対する政府の要件について、透明性と情報アクセスの不足が取り沙汰されているが、将来を見越した政府はSDOsを活用し、国家プログラムのパイロット事業を行っている。

調査に参加した組織の64%が政府との契約を結んでいる中国では、地方自治体が社会的企業やNGOにプロジェクトを委託することで、コスト効率の良い革新的なアプローチを模索しつつ、社会的インパクトの創出を図っている。事例研究の1つとして中国の仏山市のソーシャル・イノベーション・センターが挙げられる。新興の非営利法人や社会的企業に対して、自治体が家賃補助と開業資金の提供、さらに認定の支援を行っている。

Doing Good Indexは最高得点の5点から最低0点の得点評価を行っている。補助指標ごとの得点にばらつきがあり、まんべんなく高得点を上げる国がいなかったことで最高得点に輝いた国はいない。調査対象となった15カ国は、どの国でも改善の余地があるのだ。

Doing Good Indexのような分析ツールを開発することで、社会的責任投資や慈善的寄付を巡る議論を発信し、その過程で各国における改善を後押しすることができる。その一方、CAPS代表のShapiro博士が警告するように、「アジアの各国政府が民間による社会的責任投資を促進すべく、規制や制度的インフラ、さらには文化的・社会的な基盤を整備しなければ」チャンスを逃してしまうことになるのだ。

複雑な課題の解決にはマルチセクターおよびマルチステークホルダーの参画が不可欠である。Doing Good Indexは、改善を促進もしくは阻害する要因を特定することで、ステークホルダーが地域特有の要因に働きかけることを促し、アジアでの潜在的な社会的責任投資とフィランソロピーを引き出すために何をすべきかが明確となる。成功した暁には、SDGsの達成に大きな貢献を果たすことができるだろう。

執筆:アーロン・スローン