ブロックチェーンの活用とサプライチェーンの透明性確保




ブロックチェーンはビットコインの基幹技術として取り上げられることが多いが、サプライチェーンのトレーサビリティ(追跡可能性)向上など、さまざまな分野での応用が可能である。

そもそもブロックチェーンとは何か。簡単に言えば、中央の管理者を通さずに情報を交換できる技術である。暗号化したデーターを交換し、一旦成立した取引は遡ってその記録を改変することができない(非可逆性)。例えば海外送金は、銀行などの信頼できる中央機関を経由した上で成立する。では信頼される銀行が存在しない場合はどうか。ブロックチェーンは参加者各自が取引の可能性を確認し、成立した取引を検証した上でリンクし、タイムスタンプを押し、参加者全員で履歴を共有することができる。この技術を活用すれば、金融業界のみならず食品セクターにも変革をもたらしうるのだ。

水産物業界におけるブロックチェーン

サプライチェーンのトレーサビリティと透明性を確保する利点は、以下の通りである。

  1. 環境に関する法規制に準拠した商品を調達・生産することができる。
  2. 詐欺的な代替商品を防ぐことができる。
  3. 公正な労働慣行につながる。

水産物セクターでは頻発する人権侵害や環境問題が取り沙汰されている。ソフトウェア会社と技術系新興企業、水産物メーカーはブロックチェーンの個別検証プロセスにならい、水産物の漁獲や加工段階でこの技術を応用して解決を図っている。社会的・環境的な違反行為の隠蔽を難しくするのが狙いだ。

太平洋諸島では、WWFがブロックチェーン技術を提供するConsenSysとICTソリューションを提供するTraSeable、さらにマグロ生産加工会社であるSea Quest Fiji Ltd.と協働し、Viant技術を活用してマグロのトレーサビリティ向上のプロジェクトに乗り出している。消費者はQRコードかバーコードをスキャンすれば、どの漁船がいつ、どこで釣り上げたマグロか、さらに漁法を把握することが可能となる。

水産物業界における不正行為を特定し、軽減すべくこれまでもブロックチェーン技術を活用するさまざまな取組みが行われてきた。英国ソフトウェア会社のProvenanceは2016年1~6月に、マグロ漁業の社会的サステナビリティ指標を測定する携帯ベースのブロックチェーン・アプリによるパイロットプロジェクトをインドネシアで展開し、成功を収めた。同様にIoT(モノのインターネット)技術を活用し、技術系企業のHyperledgerは、水揚げされた魚にセンサーを取り付け、バイヤーが原産地を把握するのみならず、安全な輸送の確認を可能としている。

水産物業界の他にも、ブロックチェーン技術の活用がトレーサビリティの向上に一役買っている。小売り大手のウォールマートはサプライヤーと協働し、IBMソフトウェア「ハイパーレッジャー・ファブリック」を活用して食の安全性向上を図っている(Walmart, is working with suppliers)。さらにロンドンを拠点とする技術系新興企業であるEverledgerは、ダイヤモンドなどの高級品(encrypt luxury goods including diamonds)に暗号化されたコードを忍ばせる技術を活用し、原産国を示すことで紛争ダイヤモンドの排除に努めている。

包括的なガバナンス体制の必要性

サプライチェーン管理で大きな成果を上げている一方で、技術的解決策としてはまだ発展途上にある。サプライチェーン全般にわたる記録が可能となったが、そのプロセスがデジタル署名と一致しなかったり、正確な情報が記録されなかったりというリスクがあるのだ。ブロックチェーン技術を活用して海産物業界が抱える課題を解決するには、政府による規制と監視体制を強化し、漁業管理を徹底することで、不正行為を隠蔽するトランスシップメント(transshipment)の抜け穴を防ぐ必要がある。トランスシップメントとは荷卸しした貨物を他の船舶に積み替えて別の目的地に輸送することで、港湾局の目が届かない海上でのIUU(違法・無報告・無規制)操業の温床となっている。また正確な情報収集やトレーサビリティを阻むなど、さまざまな問題をはらんでいる。

海産物サプライチェーンにおけるブロックチェーン技術の活用は始まったばかりであるが、追跡可能な一連の情報を記録することで、違法行為が横行する海上での透明性を高めることにつながる。企業はこの情報を活用してガバナンス体制を構築し、自社でスポット監査を行うことでサプライチェーンのリスクを管理できる。

ブロックチェーン技術はこの先の成長が見込まれる。インターナショナル・データ・コーポレーションによると、今後3年以内に製造業者と小売業者の30%(30% of manufacturers and retailers)がブロックチェーンを活用して商品の流通を追跡すると推計される。修正や改ざん出来ない記録を作成し、すべての参加者が商品の流れを把握することで小売業者やレストラン、消費者の透明性確保につながるのだ。

水産物業界のサステナビリティおよびブロックチェーン技術を応用してのサプライチェーン管理についての詳細はジュリア・ホイットニーまで:Julia.whitney@csr-asia.com

参考文献:

Nir Kshetri (2017). Blockchain’s roles in meeting key supply chain management objectives. International Journal of Information Management.

Forbes – A Complete Beginner’s Guide To Blockchain

Hyperledger – Seafood case study.

執筆:ジュリア・ホイットニー