職場のセクハラ撲滅への企業の努力




この数か月、セクハラ(性的嫌がらせ)スキャンダルがメディアを騒がせている。これを受け、企業は職場での実態の把握と全従業員に及ぼしうる影響について詳細な調査に乗り出した。日本の公的機関から、東南アジアの新興企業、さらにハリウッドの重鎮にいたるまで、さまざまなセクハラ事例が明るみに出たことで、この問題があらゆる国や業界で広がっていることが浮き彫りとなった。特に注意が必要なのは、全世界で女性従業員の割合が75%と高いアパレル業界である。

アジアでは4,000万人にのぼる労働者が衣料品・繊維・履物業界に従事しているため、アパレル企業にとってセクハラは看過できない問題である。あるリサーチ(research)によれば、企業の評判を失墜させるリスクの他に、ビジネス面でのダメージが大きいことが見えてきた。欠勤や生産性低下、離職率上昇に影響し、カンボジアのアパレル業界ではセクハラにより年間8,000万米ドル(約90億円)にものぼる代償を払っていると推計される。企業は職場やサプライチェーンでのセクハラをどうやって予防することができるだろうか。

1.セクハラの予防および事後対応に向けた包括的な企業方針と経営システムを実施する
多くの企業は何らかのセクハラ指針を策定しているが、単なるコンプライアンスのための規定では意味をなさない。セクハラをしても加害者が処分されないようでは、再発する可能性が高くなる。このため、いかなる行為がセクハラに該当し、加害者に課される処罰を従業員が理解することがセクハラ予防の第一歩となる。これは各職場レベルからサプライチェーン全体を対象とすべきだ。
ケア・インターナショナルという国際NGOがカンボジアで行ったリサーチ(research)から、縫製工場の女性従業員の3人に1人がハラスメントの被害を受けたことがあるという。問題の解決に向け、ケア・インターナショナルは工場の経営陣と協働し、セクハラの予防と事後対応に向けた経営システム(management systems to prevent and respond to sexual harassment)を策定した。この中には職場における行動重視型のセクハラ指針、また労使双方から構成されるセクハラに特化した委員会の設置により被害が報告された際に対応することなどが盛り込まれている。セクハラに該当する事例を従業員が特定し報告できるよう、マルチメディアを活用しての行動改善トレーニングを行い、セクハラ指針が有効に機能するよう図っている。
このプログラムにより、女性従業員のセクハラ・リスクがすでに20%減少した。さらに経営陣からは事業活動の改善が報告された。同指針の策定に携わった人事課長は次のように述べている。
「私にとって最大の懸念事項は、いかにして職場の安全を確保し、問題を未然に防ぐかということです。なぜなら生産に影響を及ぼすからです。一連のセクハラ予防策は当工場プログラムにスムーズに取り入れられ、私は工場の内部規定と懲罰規定にセクハラ方針を盛り込みました。プログラムを導入した当初から多くの手ごたえがあり、セクハラ行為は実質的になくなりました。」
この成功事例から、カンボジア縫製業協会は職場での労働者の安全を確保するツールとして評価され、同国は工場におけるセクハラ予防策での先駆的取組みを認められる存在となった。同モデルはアジア地域の他の国々で展開されている。

2.セクハラを容認しない職場環境を創り出し、リーダーシップを発揮する
ハリウッドの大物プロデューサーであるハーベイ・ワインスタイン氏に対する相次ぐセクハラ告発は、業界内に蔓延するセクハラ容認の風土が、そこで働く女性に多大な影響を及ぼすことを示している。一方で、率先してセクハラを非難することで、全従業員にとってプラスな労働環境につながるのだ。
各職場レベルでは、セクハラに対するゼロ容認の姿勢を打ち出し、その重要性を啓発して女性従業員を支援する環境を創り出す際、経営陣の役割が要となる。同様に、企業には業界全体に働きかけていくチャンスもある。
縫製業界の小売業者は、サプライチェーン内でのセクハラに反対の立場を明確にするメリットを実感している。リーバイス社は長年にわたりカンボジアでケア・インターナショナルと協働し、取引先の工場が全従業員に対して職場での行動に関する啓発を行うよう徹底している。ケア・インターナショナルの職場におけるセクハラ方針を社内に取り入れる企業も増え、中にはサプライヤーに注目してジェンダーに基づく暴力の根絶に広く取り組む企業もある。

3.セクハラ被害の報告プロセスを透明化し、あらゆる立場の女性からの報告を支援する
職場でのセクハラについて、女性側が泣き寝入りをせずに声を上げ始めた結果、この問題が一躍注目されることになった。上記の通り、被害が報告された際に対応する効果的な経営システムと、報告を真摯に受け止める職場環境が不可欠である。報告に対して専門的で行き届いた対応を確信できるからだ。さらに踏み込んで、セクハラの報告件数と対応策を社外向けに報告することで透明性を確保し、企業が後手の対応策ではなく、積極的に取り組んでいることを公表することが有効だ。
セクハラの実態を公表することは、ハラスメントの事実を認め、悪い意味で注目を浴びてしまう恐れがある。会社として、または業界全体としての評判を落とすリスクから、セクハラの問題を認めない企業が少なくない。
しかしながら、職場でセクハラが一度も起こったことがないと言明しても、現在の情勢を考慮すれば信憑性に欠けるだろう。セクハラの報告件数を公表し、それぞれのケースへの対応策と再発の予防を徹底したことを示すほうが、一般の人々や将来的に就職を考えている人々からも好意的に受け止められるだろう。

4.職場における暴力とハラスメントを予防するグローバルな取組みへの賛同を表明する
ILO(国際労働機関)が進める、職場での暴力とハラスメントを根絶するための新たな条約は、国を問わず職場とサプライチェーンの女性労働者を保護するより公式な枠組みである。政府は統合的アプローチのもと、仕事の世界での暴力とハラスメントの解決を図り、政府を含む公共セクターと民間セクターの責任分担を明確にし、さらに共同戦略のもと力を合わせていくことが求められる。
新たなILO条約は、各国政府に対して職場での暴力とハラスメントを認め、解決を図り、是正措置を講じることを優先すべきだとしている。政府やその他のステークホルダーは責任を持ち、加害者が処分されない状態に終止符を打つべく働きかけなければならない。
この新条約は2018年6月のILO総会の場で第一次討議が行われる。企業は調達先の政府に対して、職場での暴力の解決を最優先事項としていることを訴え、さらに条約への賛同を表明することで後押しできる。またILO総会で投票権を持つ雇用者代表(多くの場合、経済団体の代表者)や調達先の政府代表者にロビー活動を展開することも有効である。ILOの新条約の詳細についてはこちらからhere

CSRアジアの会員向け限定ウェビナー

CSRアジアの会員(ストラテジック・パートナー)限定で、ジェンダー平等に関するウェビナーが先週行われた。ケア・インターナショナルから講師を迎え、グローバル・サプライチェーンにおけるセクハラの解決を図る取組みを共有した。ウェビナーの録音(会員限定)へのアクセスはこちらnew Strategic Partner website

次回のウェビナーはUN Womenからの講師を迎える予定。詳細は後日発表。

CSRアジア会員プログラムについて

CSRアジアの会員(ストラテジック・パートナー)プログラムは、持続可能な開発に取り組む先進企業とNGOとの連携を図っています。参加のご希望または詳細についてはゼン・ウォンまでご連絡下さい。zen.wong@csr-asia.com

 

写真クレジット: CARE/GMBFilms
執筆:ジェニー・コンラッド(ケア・カンボジア コミュニケーション・戦略的パートナーシップ・アドバイザー)