企業と開発:アジアでセクター横断的な相乗効果を引き出す




急速な経済成長を遂げるアジア。これに伴い貧困の削減からジェンダーや人権に至るまで、複雑な開発課題が引き起こされている。社会・環境的課題の解決に向け、協働してインパクトの強い解決策を探っている企業が増えつつある。CSRアジアは9月6日号のウィークリー記事「アジアのサプライチェーンでジェンダー・人権に投資するビジネスメリット」の中で、サプライチェーンにある女性のエンパワメントがもたらすプラスの効果を検証した(英文テキストはこちらthe benefits)。例えばGAPがインドで展開したP.A.C.E(個人の能力とキャリアの向上)プログラムにより出勤率と生産性が向上し、1年後に工場の純利益124%を達成、さらに20カ月後には420%にまで増大した。幅広く開発アジェンダを理解することで、企業はリスクを軽減し、競争力を高め、企業としての評判が上がり、ひいては活況を呈するアジア市場での事業展開を確実にすることができる。

企業が国際開発の取組みに向け、政府および非政府組織(NGO)と協働態勢を取り始めてまだ日が浅い。民間セクターは持続可能な開発の達成に向けてプラスの変化を引き起こす、と見ているステークホルダーが今のところ大多数である。ハーバード大学のケネディスクール(公共政策大学院)による調査(survey)では、参加した実業界や市民社会、メディアからの世界的オピニオン・リーダー45人全員が、新興市場国での開発課題の解決には民間企業が中心的な役割を果たして行くとした。さらにオーストラリア政府(the Australian Government listed)は援助プログラムの10目標の1つに「民間セクターとの協働」を掲げた。これは他の支援国によるアプローチや方針転換に足並みを揃える動きである。

企業と開発機関、NGOが新たな形で戦略的パートナーシップを組むことで、今後の持続可能な開発に大きな弾みがつくのだ。しかしながら、異業種間のパートナーシップの利点を最大限に引き出すには、プログラムの設計から実施、現場での測定までスムーズに運び、さらに以下に挙げるような開発機関の「共通基準(common criteria)」に適合していることが不可欠である:

  • パートナーの間でリソース・責任・リスク・チャンスを共有する。
  • 企業の中核的な専門性を開発課題とリンクさせる。
  • グローバルな開発アジェンダに貢献する。
  • その国の開発政策とニーズとの繋がりを持つ。

アジアで開発に携わる人達にとって、企業と開発のパートナーシップを成功させる要因や成功例とはどのようなものか。

今年のCSRアジアサミット(CSR Asia Summit)では、ドイツ国際協力公社(GIZ)と共に企業やNGO、開発銀行からの代表が集い、持続可能な開発に向けての課題や奨励策、チャンスの可能性についてオープンで活発な協議を行った。民間セクターとの連携を最も効果的に進めている開発パートナーの1つであるGIZは、朝食会の席で「新興市場の持続可能性への対話(EMSD Emerging Market Sustainability Dialogues)」から得られた経験や知見を共有した。EMSDとはGIZがドイツ連邦経済協力開発省(BMZ)に委託され運営するグローバルなネットワークで、そのメンバーにはシンクタンクや多国籍企業、金融界から変革を進めるパイオニアや意思決定権のある人々が名を連ねている。

この朝食会での協議内容を勘案し、いかに開発機関とパートナーシップを組み、それをうまく継続していくかについて、以下に3段階の手引きとして挙げる。

  • 直面する最も深刻なサステナビリティ課題を開発課題と連携させる。

ビジネス目標と開発課題は必ずしも相反するものではない。パートナーシップに向けて目標と優先順位を見極める際は、地域の開発とビジネス成長を妨げる最も深刻なサステナビリティ課題を検証し、開発機関が掲げる目標や多様なプログラムを理解する。これにより、企業と開発機関とのパートナーシップが民間セクターの解決策に有益に働くかを評価し、中核的な専門性をそれぞれの地域での開発課題とマッチさせることができる。

  • 長期的なインパクトに向け、マルチステークホルダーの枠組みの中で開発機関と連携する。

持続可能性のアイディアについて、出だしは開発機関と場所を選ばず、くだけた会話を始めることができるが、長期的なインパクトと継続的な連携を図るには、マルチステークホルダーによるオープンで包摂的な対話を継続する必要がある。関係の構築と相互信頼の醸成には時間と労力を要するが、共通の目標への貢献策について、すべての当事者は話を聞き、お互いに知見を共有すべきである。

  • 持続可能性について共通理解に立ち、役割分担を明確化する。

企業や開発機関、NGOはそれぞれ違った専門性を有し、開発についての理解も一致しているとは限らない。開発課題の解決に向け、明確な目標や役割、責任分担を打ち出すことに加え、地域主導型で状況に合った柔軟なアプローチをデザインすることで、プロジェクト・レベルでの効果的な実践に繋がる。

対話の輪に加わる

持続可能な開発に取り組む意志のある者は誰でも、セクター横断的な相乗効果を共に創り出すことができる。BMZの委託を受けてGIZが進める「アジアの繊維・縫製部門における社会・労働基準(SLSG)」プログラムは、同部門の多様なステークホルダーが参加する円卓会議を年に2回開催している。もし、読者のみなさんがアジアでの繊維産業国の間での協働を進め、サステナビリティ基準に照らし「底辺層への競争」を防ぐことを目指している場合は、このような会議にぜひ参加することを検討されたい。

詳細については「新興市場の持続可能性への対話(EMSD)」中国コーディネーターのDr. Cinderella von Dungern(cinderella.vondungern@giz.de)、もしくは同プロジェクトマネージャーのMs. Zhou Yiqi(yiqi.zhou@giz.de)まで。

写真クレジット: source

執筆:グロリア・ルオ