ジェンダー平等の測定




女性のエンパワメントを推し進めるという大きな課題は、どんな政府、国際機関、NGOであっても単独では達成し得ない。雇用を創出し、イノベーションや投資を促進する機動力として、企業の積極的な参画が不可欠である。

国連グローバルコンパクトとUNWomen(国連ウィメン)が2010年に策定した「女性のエンパワメント原則(WEPs)」は、職場や市場、地域社会で女性と女児のエンパワメントの促進に向けた包括的な7原則を示している。企業の規模や業種、国籍を問わず、あらゆる企業活動を通してジェンダー平等を図る上での実践的な手引きとして活用するよう奨励している。実際のビジネスケースを基に、企業のサステナビリティにいかにジェンダー平等の視点を盛り込むかを説明している。

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すでに世界各国から1,500人にものぼる企業経営者が「WEPsのCEO支持声明書」に署名し、ジェンダー平等の旗振り役として改善を推し進めている。

変革の機運を高める女性のエンパワメント

女性と女児の潜在能力を引き出すことは、企業の生産性向上と業績アップにとどまらず、家族と地域社会にも大きなプラスの効果をもたらす。

ジェンダー平等の推進がビジネスと経済に及ぼす影響について、かつてない規模での検証が進んでいる。最新の研究結果は、ジェンダー格差を解消することでグローバル経済は12兆ドル増え、企業全体でジェンダー多様性を図ることで収益性と生産性、さらに組織の効率が高まるとしている。ジェンダー平等への積極策を打ち出している企業とのパートナーシップに乗り出す政府とNGOは増え続けている。さらに投資家サイドも、企業のジェンダー平等の取組みを将来的な成長を示す指標として注目している。

このようなチャンスにも関わらず、依然として女性を取り巻く社会や経済、法的な障壁が立ちはだかり、女性の就労やキャリア形成、ビジネスの拡大を阻んでいる。変化のスピードとスケールを変えない限り、男女間の経済的平等を達成するには100年以上を要するとの調査結果が発表されたばかりである。差別や無意識の偏見、さらに暴力に晒されるリスクも解消されず、女性の正規雇用や持続可能な成長への貢献を妨げている。

あらゆる組織が力を合わせ、変化をスピードアップさせなければならない。とりわけ企業にはプラスの貢献を図る大きなチャンスがあるのだ。女性の潜在能力をフルに引き出すことで企業の業績改善につながると指摘する調査が増えている。具体的な取組みとして挙げられたのは、女性の健康を守り支援することで離職率や欠勤を低減させ、職場内で託児施設を提供し生産性を向上させる。また法的・社会的な障壁を解消して新たな市場チャンスをつかみ、女性向けの専門家養成プログラムを策定してイノベーションを推進し、管理職レベルでの新たな視点を取り込むことなどである。

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とはいえ、2015年にマッキンゼーとリーン・インが行った調査(research)から、ジェンダー平等に真摯に取り組んでいる企業は限られていることが分かる。大多数の企業は、これから明確な目標を設定し、説明責任を果たし、成果を追跡しなければならないというのが現状だ。

企業のジェンダー平等の取組みに弾みをつける「WEPsギャップ分析ツール」 

この3月に国連グローバルコンパクトはWEPs「ジェンダーギャップ分析ツール」と呼ばれるオンライン・プラットフォームを立ち上げた。世界的に展開するビジネスリーダー達はこれを活用し、職場や事業を展開している市場・地域社会でのジェンダー平等と女性のエンパワメントを改善する上での、自社の強みやギャップ、チャンスを洗い出すことができる。

170社を超える企業との協議を通して構築された本ツールは、ジェンダー平等に関する企業の取組みの到達度合いを評価し、「初心者」から「改善者」「達成者」そして「指導者」の4段階に分けている。

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本ツールは使いやすく、機密性を守りつつ現行の企業方針やプログラムを評価する無料のプラットフォームとなっている。改善の余地がある点を浮き彫りにし、企業が将来的な目標を設定する際のチャンスも明確にすることができる。

全世界のベストプラクティスを基に作成された18の設問は、リーダーシップ・職場・市場・地域社会におけるジェンダー平等のトピックを網羅している。

それぞれの質問は、正式なコミットメントから実践・行動、測定、進捗状況の報告、さらに対応策の実施まで、一連の流れに沿い、あらゆる規模の企業が活用できる管理モデルの指針を示している。

多項選択式の質問とは別に、国際的な報告フレームワークや基準に基づいて策定された任意的な17の成果指標も盛り込んでいる。企業はデータを入力し、プログラムや企業方針の効果を評価し、時間をかけて進捗状況を測定し、同業他社や業界のスタンダードに照らして進展をベンチマークする(集団レベルで)よう推奨されている。

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企業は本ツールを活用し、ジェンダー平等に関する現状への理解を深めるのみならず、主要なステークホルダーと有益なエンゲージメントを果たし、次に取るべき行動を特定することができる。

アジアにおけるジェンダーの格差解消への道のりは長いが、WEPsのツールを活用することで前進を図ることができる。CSRアジアは企業による本ツールの活用や、女性のエンパワメント戦略の策定や実施、さらにインパクトの測定を支援します。WEPsツールに関する質問やサポートの詳細について、ご連絡ください。

出典:

The Women’s Empowerment Principles Gender Gap Analysis Tool Website – https://weps-gapanalysis.org/

MacKinsey Women in the workplace – https://womenintheworkplace.com/

執筆:イザベル・モリン