「気候週間」でリーダーシップを発揮する企業




世界をリードするトップ企業は、気候変動がもたらすリスクとチャンスを認識し、対策に乗り出している。先月ニューヨークで開催された気候週間(Climate Week)には企業や公的機関、国際NGOの代表が集い、再生可能エネルギーの推進や食料廃棄物の削減、イノベーションへの投資に焦点を当てながら気候変動の課題やチャンスについて協議を行った。

再生可能エネルギーへのコミットメント

民間セクターは世界の電力の約半分を消費し、気候変動に多大な影響を及ぼしている。1企業が収益を上げ続けるには、従来通りの事業活動を見直す以外に難局を切り抜ける妙案はないのだ。シュローダー経済チームの報告(Schroders Economic Team reports)によると、「地球の気温が上昇するにつれて事業コストがかさみ、世界的な経済成長は鈍るだろう。最近のアメリカ政府に見られるように、気候変動に行政側が何ら対策を打たず、さらには逆行する行動(detrimental action)に出ることもある。しかしながら気候に詳しいビジネスリーダー達は気候変動の課題に立ち向かっているのだ。」

さまざまな業界にわたるリーダー達は、環境インパクトの軽減や効率の改善、事業コストの削減を積極的に推し進めている。国際非営利団体のクライメート・グループ(The Climate Group)が開催した気候週間の会期中にも、世界的に展開する金融機関のシティ(Citi)とJPモルガン・チェース(JP Morgan Chase & Co.)がRE100イニシアチブに加盟することを発表した。RE100とは、「100%再生可能な電力を目指す100社を超える大手企業からなるグローバルな協働プロジェクトで、再生可能エネルギーの需要喚起と供給を目指している」。現在、加盟企業は111社にのぼり、エスティローダやケロッグに続く形で先日加盟を果たしたシティやJPモルガン・チェースなど、機運はますます高まっている。クライメート・グループのマーク・ケンバーCEO(Mark Kebner)が強調するように、「我々は低炭素社会へと歩を進めている・・・それは望ましい状態であるのみならず、有望かつ経済的魅力があるため近いうちに実現するだろう」。

公共の利益を図る協働態勢

アジア太平洋地域を中心に広範囲にわたるバリューチェーンを擁するアパレル業界は、気候変動により多額のコストを被ると予測されている。シュローダーの報告書によると、アジアの国々の多くが気候変動に対して脆弱もしくは非常に脆弱なため、同地域で事業を展開したりサプライチェーンを抱えたりする企業は、2011年にタイを襲った洪水(2011 flooding in Thailand)時に見られたように、生産の中断やコスト高に見舞われる可能性があるのだ。一方で企業側は、地球の気温上昇による災難を食い止めるべく積極的な取組みを進めている。

気候週間の会期中、世界資源研究所(WRI World Resources Institute)は、アパレル業界のトップ企業が科学的根拠に基づく二酸化炭素排出の目標値を定めるSBTイニシアチブ(Science Based Targets)に取り組んでいくと発表した。H&Mとマークス&スペンサー、ウォールマートに加えて、ナイキやギャップ、リーバイスを始めとするアパレルブランドは、地球の気温上昇を2℃未満に抑える上で科学的に必要とされるCO2排出量に基づく削減目標を設定することを約束した。

WRIの民間セクター気候変動緩和部を統括し、SBT運営委員を務めるシンシア・クミス氏は、「SBTイニシアチブに参加することで、これらのブランドはアパレル業界で指導的な役割を果たすことになります」と指摘している。「革新的取り組みで注目されているファッション業界です。アパレルブランドも革新的アイディアで気候変動への解決を図っています。この業界では排出量の9割をバリューチェーンが占め、多くのブランドが同じサプライヤーを共有しています。バリューチェーンで意欲的な目標を設定することで、アパレル業界全般にわたり協働やイノベーション、効率性に向けた大きなチャンスが拓けるのです。」2

食料廃棄に注目

人が食べるために生産された食料のうち、地球全体で約三分の一がサプライチェーンおよび家庭での消費の段階で喪失(ロス)もしくは廃棄されている。3国連食糧農業機関(FAO)によると、食品廃棄物は年間の人為的な温室効果ガス排出量の8%を占めている。これは中国とアメリカに次ぐ世界第3位の規模に匹敵している。

図1:地域別 消費および消費前段階における一人当たり食料ロスと廃棄量 出典:FAO

気候週間の会期中、国連持続可能な開発目標12.3の達成を目指すイニシアチブ「チャンピオンズ12.3(Champions 12.3)」および世界70ヵ国の大手消費財企業のうち400社が加盟する「コンシューマー・グッズ・フォーラム(CGF The Consumer Goods Forum)」は、2020年までに食品の期限表示の標準化を目指す行動要請を承認した。4 テスコやケロッグ、ウォールマート、キャンベルスープ、ビンボー、ピックンペイ、ネスレ、カールフール、ユニリーバなどの支持を受け、CGF理事会は全会一致で行動要請を採択した。2020年までに期限表示の簡略化に向けて小売業者と食料生産者が次の3つの対策を講じて、食料廃棄の削減を目指すよう呼びかけている。

  • 一度に複数のラベルを表示しない。
  • 生鮮食品には「消費期限」、非生鮮食品には「賞味期限」のいずれか1つを選択する。表現については地域の実情に合わせる。
  • 期限表示の意味を正しく理解するための消費者教育を行う。

この行動要請により家庭での食料廃棄の削減が進み、さらに気候変動が食糧生産にダメージを与えないよう対策を取る流れに弾みがつくだろう。

イノベーションへの投資

クライメート・グループによると「エネルギー関連の温室効果ガス排出量の23%を占める運輸部門による気候変動への影響が急速に増している。」気候週間の機会を捉え、電気自動車(EV)の導入とインフラ整備を促進すべくEV100キャンペーンを立ち上げた。登録済み車両の半数以上を保有(over half of all registered vehicles on the road)している民間セクターが、EVへの切り替えを牽引して行くことが重要である。EV100キャンペーンは、RE100と共に「将来性のある低炭素型ビジネスモデルの鍵を握る」企業がリーダーシップを発揮し、課題を解決していく取組みで、加盟企業にはバイドゥ(百度)やHP、イケアグループ、PG&E、ユニリーバなどが名を連ねている。2030年までに大型のディーゼル車やガソリン車をEVに切り替えたり、バッテリー充電設備の整備に取り組んだりすることになる。

クライメート・グループのヘレン・クラークソンCEOは、「EV100は企業のグローバルな購買力と社員や顧客への影響力を活用し、需要の喚起とコスト削減を目指します。加盟企業は電気自動車への切り替えを前倒しし、地域の大気汚染問題の解決を図ることがビジネスとして理に適うことを理解しています。自動車業界に対して電気自動車をより多く、迅速に、そして安価に提供するよう迫っています。」

バイドゥのワン・ルー副社長は「EV100に加盟する初の中国企業となり光栄です。世界的なIT大手企業として、当社は技術革新によりすべての人のためにより良い将来を作り出し、事業全般を通して持続可能性に取り組んで行く決意です。すでに低炭素型の電動モビリティの推進で大きな進展を遂げています。他の中国企業も当社に続くことを期待しています。」5

リーダーシップをとる

気候変動は広範にわたる複雑な課題であり、その解決には強いリーダーシップが求められる。世界のビジネスリーダー達は株主やステークホルダー、そして地球を守るために課題解決に取り組む決意を表明している。今年の5月には大手企業30社のCEOが米トランプ大統領宛にパリ協定への残留を求める公開書簡(open letter)に署名したことからも分かるように、グローバルな取組みに参加する企業が急増している。公開書簡ではパリ協定に則りビジネス活動を展開する利点を以下のように明記している。

  • グローバル市場における企業の競争力を高める
  • 最新の効率的な技術を採用することで製造業にメリットをもたらす
  • 明確な目標を掲げることで、長期的な投資計画を立てられる
  • 国内外でクリーンかつ効率的なエネルギー市場が拡大することで、雇用創出と経済成長につながる
  • 低コストで二酸化炭素排出量を削減するための市場原理に基づく解決策とイノベーションを促進する

気候週間の初日に、フテラ(Futerra)とクライメート・グループは、気候変動のプラスで楽観的な側面や現代社会が乗り越えていく力に焦点を当てた広報活動である「クライメート・オプティミズムClimate Optimism」を立ち上げ、その宣言文で「我々は気候変動の課題を解決しなければならないし、解決できるし、解決していく」と謳った。課題に対処するには、民間セクターで醸成された強いリーダーシップを具体的な行動に移す必要がある。手をこまねいていたら、環境面でもビジネス面でも高い代償を払うことになる。ニューヨーク気候週間の会期中に撮影されたインタビュー(interview)で、エコアクト(EcoAct)代表のウィリアム・テイセン氏は警告している。「実際に行動に移し始めた人達はすでに気候変動および持続可能性へのメリットを実感しています。(企業は)今、行動を起こさないと、取り残されてしまいます。後れを取り戻そうとすれば、より多額の投資を必要とするのです。」

画像ソース: www.climatenetwork.org

1. The World’s Most Influential Companies committed to 100% renewable power, RE100.org

2. Retailers Joining Initiative to Tackle Climate Changesciencebasedtargets.org

3. Global food losses and food waste, fao.org, 2011

4. Companies Commit to Simplify Food Date Labels, wri.org

5. EV100 members, theclimategroup.org

執筆:アーロン・スローン