高齢化するアジアにおけるビジネスの将来性




世界の60歳以上人口の過半数を抱えるアジアでは、2050年にその数が13億人に達すると予測されている1。同地域にある日本と韓国、シンガポールでは、高齢者が人口の14%以上を占める「高齢先進国」となっている2

人口の高齢化がアジア地域にもたらす社会・経済・政治的影響について、国連人口基金(UNFPA)の報告書3は以下を挙げている:

  1. 手薄な社会的保護と貯蓄の不足による所得の不安定化。アジア地域で何らかの年金支給の対象となっている高齢者は約3割にとどまっている。
  2. 高齢男性と比べ、貧困に対して脆弱な立場にある高齢女性。これは教育レベルの低さやフォーマルセクターへの参画の制限など、生涯を通じて被ってきた相対的不利益に起因している。
  3. 家族構成の変化(高齢者支援を担う成人した子どもの数の減少)や移住などにより、高齢者に対する家族およびコミュニティからの支援が徐々に弱まっている。このため介護ヘルパーやその他のケア関連サービスのニーズが高まっている。
  4. 住宅供給やインフラ、公共施設など高齢者に優しい環境整備の必要性。高齢者が社会的にも経済的にも生き生きと活動し続けることのできる環境を整える。

各国政府は高齢化の動向および対策の必要性について充分に理解している。2015年後半、UNFPAは国際NGOのヘルプエイジ・インターナショナルの支援を受け、アジア太平洋地域の26カ国4で高齢化および高齢者に関する政策・法案の実情を調査した。調査対象となった26カ国のうち、高齢化および高齢者に特化した国策や法案、行動計画を策定したのは18カ国であった。さらに23カ国では高齢化について専門の担当者を置いている。アジア各国では国策や法案、行動計画の策定について著しい進歩が見られたが、政策の実行および実績の評価については未整備である点を同調査は指摘している。

企業への影響

高齢者の増加は企業にとってリスクともチャンスともなるため、それらを特定することが先決である。ビジネスリスクとして、不可欠なスキルや経験、人間関係・ネットワークの喪失、若手人材の不足、さらには介護と仕事を両立させる必要性の高まりによる生産性の損失が挙げられる。一方で、人口の高齢化に対応する製品・サービスのイノベーションや調整、また培われたスキルや経験、人間関係を活用して定年後も働き続ける等、企業にとってのチャンスも広がっている。

高齢化による社会・経済・政治的影響の解決に向け、企業は以下のように事業活動を見直することで貢献を図っていくこともできる。

  1. あらゆる年齢の労働者にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と適正賃金を提供する。
  2. 包摂的で年齢の多様性に富む職場の推進に向けてあらゆる差別的慣行を撤廃する。
  3. 高齢者のニーズに応える製品やサービスを開発・調整する。
  4. 職場やコミュニティへの高齢者の参画機会を創出する。
  5. 高品質で手頃なヘルスケア製品やサービスの拡充に向け、企業の専門性を活かす。

企業はいかにチャンスを掴み、人口の高齢化に適応しているか以下に具体例を紹介する。

東京に本社を構え、日本に12,000以上の店舗を展開するコンビニエンスストア・チェーンの株式会社ローソンは、「マチの暮らしにとって、なくてはならない存在」として、日常的に来店する顧客に生活全般のサポートを提供するコンビニを目指している。顧客が日常生活の中で抱えるさまざまなニーズに対して、商品やサービスを多様化することで競争力を保ち、役立つコンビニとなっていくのだ。急速に高齢化が進む日本において、以下の取組みを展開して高齢者のニーズに応えている5

  1. 健康志向の高齢者向けに小分け惣菜など、さまざまな食料品を提供している。
  2. 薬局チェーンとタイアップし、調剤薬局併設型コンビニを展開している。
  3. 医薬品へのアクセス向上のため、ローソン店舗での市販薬の販売を強化している。
  4. 「ケアローソン」と呼ばれるハイブリッド型店舗モデルを展開し、健康相談窓口に加え、高齢者と家族のニーズに応える品揃えを強化している。
  5. 「ローソン・ワゴン」と呼ばれる移動販売サービスを提供し、山間部を含む高齢者の住居や施設を巡回し、食料品や日用品などを販売している。

グローバルIT企業のIBMは、モノのインターネット(IoT)とコグニティブ・コンピューティングを活用し、高齢者住宅・施設に居住する高齢者の日常活動と健康全般をモニターし、安全で自立した生活をできる限り長く続けられるように支援している。IBMは2017年2月から、高齢者向けにヘルスケアを提供するAvamere Family of Companiesと協働し、半年にわたるリサーチを行っている6。この中では動作や空気の質、転倒リスクを招く要因、さらには個人の衛生、睡眠パターン、トイレの回数を含む日々の活動をモニターしている。IBMはストリーミング処理したデータを分析し、Avamereが高齢入居者の行動を理解したり、ケアモデルを改善、介護ヘルパーの効率を上げたりできるような支援を行っていく。このような取組みは、スマート住宅と環境の創出により、世界中の高齢者が少しでも長く自宅で生活できるよう支援を行う目標を掲げるIBMにとり追い風となる。

急速に高齢化が進むアジアに展開する企業は、その影響を評価し、役割を見定め、人口変動がもたらすビジネスチャンスを見極める必要がある。アジアの各国政府は高齢者雇用を推進し7、さまざまな奨励策8を打ち出して後押ししている。

9月26-27日にバンコクで開催されるCSRアジアサミット2017では、高齢化について人口動態や政策の現状、さらに労働人口問題について討議を行う。企業が具体的なケーススタディを披露し、いかにして高齢化がもたらすチャンスを掴み活かすことで、高齢化の意味合いを再定義し、意識を変え、より効果的に適応していくかを探っていく。サミット詳細はこちらからCSR Asia Summit 2017

画像クレジット: Centre of Active Ageing

1. World Population Ageing, UN Department of Economic and Social Affairs Population Division, 2015

2. Live Long and Prosper: Aging in East Asia and Pacific, The World Bank, 2016

3. Ageing in the Twenty-First Century: A Celebration and A Challenge, UNFPA and HelpAge International, 2012

4. Policy Mapping on Ageing in Asia and the Pacific: Analytical report, UNFPA and HelpAge International, 2015

5. LAWSON, Inc Integrated Report, LAWSON, 2017

6. IBM and Avamere to Bring Cognitive Eldercare Research to Senior Living and Skilled Nursing Facilities, IBM, 2017

7. Rapidly Aging Thailand Tells Businesses to Hire More Elderly, Reuters, 2016

8. More help for companies to support older workers, The Straits Times, 2016

執筆:ジャスティン・テオ