5つの技術トレンドが織りなすサステナビリティ報告の将来像




急速に進歩するデジタルと技術の只中にあり、企業のサステナビリティの取組みと報告は様変わりするだろう。技術革新と共にリアルタイムの更新がますます求められ、サステナビリティのモニタリングや実践、報告の方法にさまざまな変革がもたらされることになる。

現在のところ企業は多くの時間と労力、リソースを割いてCSR報告書を作成しているが、実際に読まれているのだろうか。CSRを業務プロセスに統合せず、CSR報告書も目に見える価値をもたらさない場合、毎年繰り返されるCSR報告書の作成作業は企業リソースの無駄遣いとなる。新たな技術を活用することで報告はよりスムーズになり、以下のような報告におけるデータの問題点を解決することもできるのだ。

  • あらゆる事業部門に散在する情報
  • 定量的情報や指標の欠如
  • ずさんな記録管理による情報の不足
  • プロセスとデータベース間の統合の不備

データ収集や編集さらに報告をいまだに煩雑な手作業で行う企業が多いが、これは時間効率が悪く、膨大な労力を要し、さらには低品質な調査結果や不正確さにつながる恐れがある1 。高度化した技術を活用したCSR報告アプローチを取ることで、様々な改善策を即座に講じることができるのだ。サステナビリティの現場にいる人々は以下に挙げる5つの主要な技術的トレンドを勘案すべきである。

  • リアルタイム・データによるステークホルダーのリアルタイム監視

ネットワーク接続するモバイル機器にいつでも、どこからでも繋がることができる現在、データへのアクセスや、データ収集・チェック・関連づけ・分析がしやすくなっている。日常生活に広く技術が浸透したことで、ステークホルダーは迅速かつ便利なデータアクセスの実現を期待している。情報が定期的に更新され、その一貫性と妥当性について簡単に検証できることを求めているのだ。このようにオープンで継続的に審査されるため、企業は明確かつ信頼性あるサステナビリティ情報を常に提供する必要がある。

グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)の報告書「2025年におけるサステナビリティと報告のトレンド(‘Sustainability and Reporting Trends in 2025’)」は、ステークホルダーがコーポ―レート・ガバナンスや戦略により直接的なインパクトを与え、新たな役割を担って行くと予測している。企業のサステナビリティ・メカニズムの中で大きな力を持ち、関与を深めることになるだろう。

新たな技術により、企業はリアルタイムのデータ(real-time data)を自動的に収集できるようになった。これはCSR年次報告書の終焉を予感させている。なぜなら発行される時点ですでに3カ月遅れの内容になっているからだ。オンライン報告(online)やより定期的に報告を行う流れがあり、さらにはリアルタイム・データを掲載するサステナビリティ・ダッシュボード(sustainability dashboards with real-time data)まで出現しているのだ。

  • より広くステークホルダー・エンゲージメントを図るチャンスとなる新たなコミュニケーション・チャンネル

新たな「情報時代」は、ビデオや双方向型の情報画像(videosinteractive infographics)、さらにはバーチャルリアリティー(VR virtual reality)など多様なメディアチャンネルを駆使して、企業や個人が自らのデータ分析と調査結果を作成・拡散させることを可能とし、CSR報告書や年次報告書のような従来型の報告方法を補うものとなっている。例えばVRを活用することで、コミュニティやさまざまなステークホルダーの参画を画期的な方法で促し、サステナビリティ課題について啓発することができる2

これまでのデータ提示形態と比べて、これらの斬新なデータ拡散チャンネルは、より多くの人々へのアクセスを実現することで、サステナビリティの調査結果に人々が関心を抱き、身近に感じることとなる。企業はさまざまなチャンネルを駆使して、情報の受け手がより興味深く楽しむことができるサステナビリティ情報を普及させることで、企業は新たなアクセス先を広く確保することにつながるのだ。

ビール醸造大手のハイネケンは「より良い世界の醸成 ‘Brewing a Better World’」と題する双方向のサステナビリティ報告を立ち上げ、主要な情報をGIFs形式で提供している。イタリアの建設グループであるサリニ・インプレギロは、複数の双方向型CSRの主要業績評価指標(KPI)interactive CSR KPIsをウェブサイトに掲載し、ヒューストンに本拠を構える廃棄物処理業者のウェイスト・マネジメントはオンライン経由で双方向型のサステナビリティ報告書(online interactive sustainability report)にメトリクスを掲載している。さらに香港ベースの電力会社CLPは双方向型の図表(interactive charts)を掲載し、環境・社会・ガバナンスの実績履歴をサイトで公表している。

  • サステナビリティの取組みを統合させる技術

技術を活用することで、企業はより明確で統合された報告の枠組みを構築することもできる。企業は技術を通して、サプライチェーンや各地域での事業の詳細なデータを盛り込み、サステナビリティとコンプライアンスの全体像を描きやすくなるのだ3 。経営体質に新たな観点を取り入れる必要性をGRIは指摘している。「データ技術の活用で、企業はセクターや地域をまたいで統合されたオペレーションを実現できるのだ。インパクトとサプライチェーンを監視し、社会や企業が抱える課題の解決に向けて協働していくことができる」4

技術は特にサプライチェーン管理に革新的なインパクトを与え、企業とステークホルダーが、サプライチェーンとそのサステナビリティ・インパクトの関連性をより包括的に理解することにつながる5。技術がもたらしたサプライチェーン・マッピングの代表例として、パタゴニアの「フットプリント記録(Patagonia’s Footprint Chronicles)」が挙げられる。ここでは全ての傘下の織物工場と農場を地図上に図示して追跡し、一貫した製造ネットワークを網羅している。さらにソースマップ(Sourcemap)を活用するサプライチェーン・プラットフォームであるスレッド・インターナショナル(Thread International)は、サプライヤー・ネットワークの徹底した可視化により、ブランドやメーカーが成果とリスクをより正確に評価することを可能とした。

技術の活用で統合された報告を通して、企業は企業戦略やガバナンス、経済的業績と、事業活動がもたらす社会・環境への影響との関連性を調査し、実績を上げていくことができる6

  • サステナビリティ測定を変えるビッグデータ

ビッグデータを駆使した、ダイナミックでアクセス容易かつリアルタイムなCSR報告が主流になりつつある。ブロックチェーンやビッグデータ、人工知能などの技術を活用し、サステナビリティ実績のデータ収集と分析を行うことで、企業や消費者が複雑で難解な統計を理解し、関連性を見出すことを手助けしている。

データ技術により、インパクトや外部性のコスト査定を進められる。外部性コストを収益化させる方法をより正確に評価する手法を創り出すことができるのだ7。ビッグデータの分析が進んだことで、これまで目に見えなかったESG指標をより明確で統合された方法で測定・分析するツールが提供され、「大局的な」サステナビリティ報告になるだろう8。アクセス性と処理能力の向上により、経営陣や投資家、その他のステークホルダーはさらに多くのデータ分析が可能となった9 。このため、企業は公表している価値と実際の行動の整合性をとる必要に迫られることになる。

  • サステナブルなビジネスを推進する人工知能

企業のサステナビリティの先行きを見通す中で、最も分かりにくいのが人工知能(AI)の役割である。なぜなら前例のないケースが多く、多種多様な業界や部門に変革をもたらす広範な可能性を秘めているためだ。実際に技術革新のスピードに規制当局側の適応・対処が追いつかないことが多かった。とはいえ、AIや最先端の技術ツールはすでにサステナビリティ報告の世界に入り込んでいる。一例としてeRevalueは、「グローバルな企業報告に見られる体系化されていない膨大なデータ・セットに対して、高速かつ効率的でパワフルなビジネスインテリジェンスを提供するAIツール」を開発した。このようなイノベーションが主流となるにはまだ時間がかかるだろう。しかし企業が事業を通してサステナビリティの取組みを記録、報告、そして最終的には実践する上で、技術は目に見えるインパクトを確実に与えることになる。

9月26-27日にバンコクで開催されるCSRアジアサミット2017の場で、企業はいかに未来型のCSR報告を実現し、さらに実現していく必要があるかについて、GRIとCLP、CPAオーストラリアから登壇者を迎えて討議する予定である。サミット詳細はこちらからCSR Asia Summit 2017

参考文献:

Accountancy Futures Academy, ‘Big data: its power and perils’, http://www.accaglobal.com/bigdata

GRI, ‘Sustainability Reporting Trends in 2025’, https://www.globalreporting.org/resourcelibrary/Sustainability-and-Reporting-Trends-in-2025-1.pdf

GRI, ‘The Next Era of Corporate Disclosure’, https://www.globalreporting.org/resourcelibrary/The-Next-Era-of-Corporate-Disclosure.pdf.

Stefan Hack and Christian Berg, ‘The Potential of IT for Corporate Sustainability’, (2014), http://www.mdpi.com/2071-1050/6/7/4163/htm.

画像クレジット: Creative commons

1. Stefan Hack and Christian Berg, ‘The Potential of IT for Corporate Sustainability’, (2014), http://www.mdpi.com/2071-1050/6/7/4163/htm.
2. https://www.clintonfoundation.org/clinton-global-initiative/inside-impact-east-africa
3. ‘Sustainability and Reporting Trends in 2025’, p.2.
4. GRI, https://www.globalreporting.org/resourcelibrary/Sustainability-and-Reporting-Trends-in-2025-1.pdf, p.12.
5. GRI, p.12.
6. Stefan Hack and Christian Berg, ‘The Potential of IT for Corporate Sustainability’, Sustainability 2014, 6, 4163-4180; p.4171.
7. GRI, https://www.globalreporting.org/resourcelibrary/Sustainability-and-Reporting-Trends-in-2025-1.pdf, p.13.
8. http://www.accaglobal.com/bigdata, p.30.
9. http://www.kpmg.at/uploads/media/The_Future_of_Corporate_Reporting_Web.pdf, p.24.

執筆:イナ・アメシェバ