全国統一炭素排出権取引市場の始動に向かう中国




中国は世界最大規模のかつてない複雑な炭素市場(カーボンマーケット)の始動に向けて準備を進めている(the world’s biggest carbon market)。まさに気候変動対策において世界を牽引していくお膳立てが整ったのだ。世界一の温室効果ガス排出国である中国は、最短で2017年11月に全国統一炭素排出権取引市場を始動させると報じられた(reportedly)。排出量データの利用可能性から、第一段階は発電およびセメント、アルミニウムの3部門のみが対象となる見込みである(likely)。

排出権取引市場もしくはキャップ・アンド・トレード方式とは、温室効果ガス削減に向けたインセンティブを排出業者に与える市場原理に基づく政策である。政府が排出量に上限(キャップ)を設け、それを個々の事業体に排出枠として配分する。排出量の削減に成功した企業は余剰排出量を不足する企業に売却できるため、排出量削減とイノベーションを促進して評価する市場を創出することになる。事業活動からの排出量コストを排出業者に内部化させることを狙い、最終的には効率的な資源配分と、低炭素型産業の促進を目指すという経済的論理に基づいている。「取引」という形態をとることで、炭素税や指令型の規制と比べて、中国企業は排出量削減をより柔軟に進めることができ、2030年に排出量をピークアウトさせるという国家公約の実現を図っている。

全国的な排出権取引市場の確立に向け、中国政府は2013年から5都市(北京、重慶、上海、深圳、天津)および2省(広東省と湖北省)においてパイロット事業を展開している。この7地域は国家のGDPの約25%(around 25%)を占め、さまざまな経済状況を反映している。各パイロット事業は、ある程度の自由裁量を持って独自に取引市場の計画や展開・施行を進めている。これは対象とするセクターや事業が異なるためで、排出権の配分や監視・報告・検証の基準、さらにはコンプライアンスのルールまで(their varying features)裁量を持っている。今年で4年目を迎えるパイロット事業は、その実績結果にばらつきが見られるが、炭素取引について実地の経験を積み重ねてきた。

これらのパイロット市場を基に導入される全国的な炭素排出権取引市場は、低炭素型社会への移行を狙う中国の野心的な取組みを促進し、経済成長に長期的な影響を与えることが期待されている(expected)。タイム誌が「炭素取引の父」と名づけたリチャード・サンダー博士は、世界の金融センターとしての香港に注目し、中国の低炭素化に貢献していくよう呼び掛けている(encouraged)。

「環境目標と充分に発達した金融システムをカップリングさせることで、香港は中国全土にとっての実験室になりうると私は非常に楽観視しているし、なるべきである。」

しかしパイロット市場ごとの対象のばらつきや実績結果の違いを考えると、いかに全国規模の市場に統合していくかは不透明である。さらに炭素取引への企業の積極的な参画を可能とするのか、成熟した国家的市場として機能していくのか、さらには中国の炭素取引市場との連携に興味を示しているEU(the European Union)やカリフォルニア州(California)のような先進地域の成熟した市場との連携が可能かについても未知数である。

全ての排出量データを適正に測定・報告・検証できるか等、さまざまな難題が待ち受けているのが現実である。国家規模で統合された炭素市場がうまく機能するには、信頼性のある比較可能なデータが不可欠であり、政府による規制の強化が続く可能性がある。中国に展開する企業は、炭素市場の導入により見込まれるコンプライアンス関連コストの増大や経費の削減など、潜在的なリスクとチャンスを理解することが非常に重要である。対象となる企業は、カーボンフットプリントの評価・管理・報告が正確かつ時宜に適い、透明性を確保しているかを検証すべきである。

中国の指導部は、低炭素型社会への移行について強い政治的意思を表明している。当面の間、全国統一炭素排出権取引市場が中国の気候変動政策の主軸を成していくだろう。中国企業にとり必ずしも難題を突きつけているのではなく、炭素取引をうまく積極的に活用することで、サステナブルな世界で成功していくチャンスにもなるのだ。

他の参考文献:

(1) http://www.tanpaifang.com/tanjiaoyi/2017/0720/60084.html

(2) http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652617306728?via%3Dihub

執筆:グロリア・ルゥオー