職場の生産性を低下させるハラスメント:ケア・インターナショナルによるカンボジアでの調査




カンボジア経済の11%を占めている衣料品・靴部門は、2015年に同国GDP成長率7%のうち2%近くを稼ぎ出した。約60万人の縫製労働者の85%は女性であるため、女性労働者の権利保障に向けて業界一丸となり行動することは明らかに理に適っており、企業にとってのメリットもある。

カンボジアでは多くの労働者が親元や慣れ親しんだ安全な郷里を離れて縫製工場へ出稼ぎに行き、結果的に虐待や搾取に晒されてしまうケースが頻発している。男女間の賃金格差も横行し、2015年には男性労働者の平均月収が161米ドルだったのに対し、女性労働者は145米ドルにとどまった。業界全体を通して、男性と比べて女性は専門教育やトレーニングを受けるチャンスに恵まれず、リーダー的役割を担うことも皆無に等しい。さらに女性は職場でのハラスメントや性暴力の被害者となるリスクが高い。

ケア・インターナショナルはカンボジア縫製業協会(GMAC)の支援の元、職場における生産性とセクシャルハラスメントの関係について調査を行った。対象となったのは同国の52縫製工場の労働者1,287人(女性1,085人と男性198人)であった。また労働者25人に聞き取り調査を、さらに生活水準から職場環境までさまざまなテーマについて9つのフォーカス・グループ調査を行い、報告書「辞めるわけにはいかない:カンボジア縫製業界におけるセクシャルハラスメントの実態と生産性の低下」を発行した。報告書全文(英語)はこちら(原題:I know I cannot quit.’ The Prevalence and Productivity Cost of Sexual Harassment to the Cambodian Garment Industry)。

統計的にカンボジア縫製業界全般を網羅する同報告書は、セクハラは女性労働者が依然として抱える深刻な問題である上に、工場にとって目に見えない重いコストとなっている点を指摘している。男女を問わずセクハラの対象となっているが、男性の場合には女性へのセクハラに加担するよう職場での圧力を訴えるケースが多いとしている。主な調査結果は以下の通りである。

  • セクハラは日常的に起こり、縫製工場の女性労働者の約3人に1人が、過去1年間に職場でのセクハラを経験したと報告している。
  • セクハラによる縫製業界の生産性の損失額は年間8,900万米ドルに上ると推計される。これには離職と欠勤による損失も含まれる。
  • 調査対象となった男性の4人に1人(198人中50人)が、職場で性的な質問を受けたと報じた。
  • 工場の外でも16.5%の女性がセクハラを経験したと報告し、調査対象となった女性の67%が安全上の不安から娯楽や親睦会等に参加していないと回答している。
  • セクハラの通報や解決策は未整備であり、調査対象となった女性は、安全策や事後処理の選択肢がほとんどないとした。

しかし職場におけるジェンダーにまつわる悪しき社会規範に対して、手を打つことも予防策を講じることもできるのだ。調査結果から、カンボジアの衣料品メーカーは以下のような改善策を取ることが有効である。

  • 問題を認め、セクハラの実態を認識してリスクと捉える。ケアのリサーチは、どの工場でもセクハラは起こりうることを示している。生産性の低下や離職による経済的ダメージとは別に、工場の評判を下げ法的責任が問われる恐れもあるのだ。先月もウーバー社内でのセクハラに関する一連の報道(a series of reports)により、投資家からの圧力を受けたCEOのトラビス・カラニック氏が辞任に追い込まれたばかりである(CEO of Uber, Travis Kalanick, resigned)。
  • 工場を安全でハラスメントのない職場とコミュニティにしていく、そして全ての人に工場はハラスメントと無縁な場所であることの周知徹底を図る。全ての女性が職場の内外を問わず、セクハラを含むいかなる暴力にも晒されることがないという原則に基づく方針やトレーニングなど、工場が包括的で一貫した対応および予防策を講じるよう要請し、支援していく。職場でのセクハラ防止を望む企業向けにケアは画期的な教材を作成した。「セクハラをここでストップ(Harassment Stops Here)」というキャンペーン教材であるが、それは人々の声に耳を傾け、支援し、通報を促すポスターや啓発カード、ステッカー、カラオケビデオやアニメなど多岐にわたっている。キャンペーン活動の一例として、2015年にケアが展開した「16日間の行動主義」では、個人や企業、コミュニティ・リーダー達に、自宅や職場、学校、コミュニティでのセクハラを断固許さないことを宣言するよう求めた。
  • 協働態勢を取り、社会規範を見直して男女が平等で尊重し合う職場での人間関係を促進する。女性への暴力を容認する悪しきジェンダー規範や心構えがセクハラを引き起こしている。女性の人権問題に精通しているNGOと協働し、根本的な原因に対して解決策を講じていく。職場プログラムを導入することでセクハラを減らし予防することができる。例えばケアは企業パートナーと協働して「Made by Women」戦略を活用し、「セクハラをここでストップ」などのプログラムのインパクトを測定し、アジアで800万人にのぼる女性の縫製労働者に対して2021年までに支援することを目指している。
  • 業界一丸となった取組みを支援し、協働して問題の根源に迫る。これには政府や業界、NGO、コミュニティなど全てのアクターの参画が不可欠で、ジェンダー不平等というセクハラの根本原因を解決しなければならない。職場での働きかけやコミュニティでの集中キャンペーンにより女性蔑視の姿勢を変えて行くことができる。業界一丸となった行動により、最終的には生産性を向上させ、セクハラの予防と女性労働者の保護を図ることができる。

9月26-27日にバンコクで開催されるCSRアジアサミットでは、サプライチェーンと女性の権利の課題について集中的に討議を行う。女性労働者の権利を擁護することは単に正しい行動だからではなく、企業にとってもメリットとなることを検証していく。サミットの詳細についてはこちらhereから、もしくはクレイリア・ダニエルcdaniel@csr-asia.comまで。

ケア・インターナショナルの報告書全文(英語)はこちらhere。カンボジアにおけるケアの取組み詳細についてはこちら here。またセクハラ防止策の詳細はこちらhereもしくは、ケア・オーストラリアのジェンダー平等セクションまでhere

写真クレジット: CARE International

1. http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—asia/—ro-bangkok/documents/publication/wcms_541288.pdf

執筆:クレイリア・ダニエル