ジェンダー平等:テクノロジー業界での取組み




テクノロジー業界(tech sector)は、その革新的な応用技術と先進的アイディアで世界の中で最も急成長を遂げる業界の一つとなった。技術系企業は持続可能性の課題にインパクトを与える最大のチャンスを生み出し、すでに社会経済的な発展に寄与している。サステナビリティの取組みに大きな弾みをつける存在となった技術系企業に期待されるのは、社内での事業にも持続可能性の概念を植えつけ、ジェンダーの平等を実現していくことである。

ところがここ数か月でセクシャルハラスメントの事例が表面化し、業界内に横行する性差別が逆に明らかとなった。ウーバー社内でのセクハラに関する一連の報道(a series of reports)により、投資家からの圧力を受けた同社CEOのトラビス・カラニック氏が先月には辞任に追い込まれた(CEO of Uber, Travis Kalanick, resigned)。ウーバー社の事件を契機に、テスラ(Tesla)やアップロードVR( UploadVR )を含む他の大手技術系企業の女性社員も声を上げることになった。しかし明るみに出たのは一部のケースであろう。なぜなら事件が報告されても、多くの場合には社内の人事部や上層部がうやむやにし、被害者が解雇に追い込まれることさえあるためだ。

ウーバー社のケースでは、投資家の間にパニックが広がり、企業のイメージを損ない、同社はガバナンス体制を大幅に変更する必要に迫られた。この事例から、大企業においても投資利益率に大きな打撃を与えることが分かる。最近の消費者はますます企業のサステナビリティ業績に関心を持ち、持続可能なビジネスへの期待が高まり、ジェンダー平等の促進は不可欠となっている。

残念ながら問題は他にもある。テクノロジー業界の女性起業家は、男性の起業家と比べて投資家に恵まれていないのだ。投資家やベンチャー・キャピタル(VC)は「女性らしいビジネス」には資金提供を厭わないが、専有技術となると女性起業家は軽んじられてしまう1。統計によると、米国での新規事業の38%は女性が起こしているが、VC資金の提供を受けている者はわずか2-6%である。2016年に男性だけで始めた企業に対するVC投資額は582億米ドルにのぼった。一方で女性起業家に対するVC投資はわずか14.6億米ドルに留まった2。結果として女性の技術系起業家の80%は、事業立ち上げに際して個人貯金を主な資金源とするよりほかなかった3

テクノロジー業界は男性優位であり、ジェンダー平等からは程遠いのが実態だ。同業界で女性リーダーのポジションにある者はわずか5%である4。先進国に依然として残るジェンダー不平等の格差。その最たる例がテクノロジー業界なのだ。

この格差を埋めるには、まず、ジェンダー平等の実践がもたらすメリットを認識し理解する必要がある。多様性により、さまざまな見識を持つ人々が問題解決を促すことができる。次に、女性がビジネスにもたらすメリットを認識すべきだ。男性に比べて女性は誠実さ、倫理性、アドバイス力に長けていると言われる。ジェンダー多様な労働力により、ますます多様化する顧客ベースに対応することもできる5。女性リーダーによる民間技術系企業は資本効率がよく、35%も高い投資利益率を実現している。VCの支援を受けた場合には、男性リーダーの技術系企業と比べて12%の増収を達成している6

(グラフ出典: http://www.pewsocialtrends.org/2015/01/14/women-and-leadership/st_2015-01-14_women-leadership-2-13/ )

変化は思うほど難しくないということが明るい材料である。経営陣をはじめとして組織全体で女性の登用を進めることは、企業と業界にプラスの変化をもたらす。フェイスブック最高執行責任者のシェリル・サンドバーグ氏が最適な例だろう。同社のトップリーダーに名を連ねるサンドバーグ氏は、女性社員向けに初の試みとなる策を打ち出している。同社は妊娠中の社員に駐車場の優先区域を提供し、車から最短距離でオフィスに着くよう図っている。2015年にサンドバーグ氏は女性社員が卵子の凍結保存を選択した場合には、会社側で2万米ドルを補助する取組みを始めた7。一年後にはアップルやグーグルなども同様の支援策に乗り出し、業界全体で女性に対する価値観が変わり始めている。女性社員の健康福祉を改善することで、熱意あふれる社員を確保し、長期的には金銭的価値につながるのだ。ピーターソン国際経済研究所の調査によると、利益を上げている企業では、女性幹部を0から30%に引き上げることで、純利益率が15%アップしていると結論づけている8

セクハラ事件が明るみに出たことで、ウーバー社は軌道修正を行い、ジェンダーの問題解決に乗り出している。今年の3月から、自発的に雇用者多様性データをウェブサイトで開示している9 (上場企業でないウーバー社には、この情報を開示する義務はない)。先月には経営陣に新たに2名の女性を登用することも発表した10。厳しい経験を糧に、ウーバー社は積極的にジェンダー平等を推進するテクノロジー業界では数少ない企業へと前進しているのだ。

どちらも大手技術系企業であるウーバー社とフェイスブックは、全く違ったアプローチを示している。ウーバー社は過去に女性の権利への配慮に欠け、セクハラ報告をうやむやにした結果、貴重な女性社員を失い、企業ブランドを傷つけ、投資家リスクを高めてしまった。フェイスブックでは女性幹部の参画を継続的に図った結果、女性社員の健康福祉が高まり、企業イメージがアップしたのだ。2社の例から、ジェンダー平等を適正に管理する重要性と、ビジネスに及ぼす影響が見て取れる。具体的な手応えをすぐに得ることはできないかもしれない。しかしウーバー社の教訓と調査データから、ジェンダー平等を適正に管理することで、投資家リスクを低減し、企業イメージと社員の健康福祉を増進し、女性社員の離職を防ぎ、引いては投資利益率を高めることが分かるのだ。

1. Why VCs Aren’t Funding Women-led Startups, 2016: http://knowledge.wharton.upenn.edu/article/vcs-arent-funding-women-led-startups/

2. Venture Capital’s Funding Gender Gap is Actually Getting Worse, 2017: http://fortune.com/2017/03/13/female-founders-venture-capital/

3. Why VCs Aren’t Funding Women-led Startups, 2016:   http://knowledge.wharton.upenn.edu/article/vcs-arent-funding-women-led-startups/

4. The Lack of Women in Tech is More than a P ipeline Problem, 2016: https://techcrunch.com/2016/05/10/the-lack-of-women-in-tech-is-more-than-a-pipeline-problem/

5. The Business Benefits of Gender Diversity, 2014: http://www.gallup.com/businessjournal/166220/business-benefits-gender-diversity.aspx

6. Women Who Run Tech Startsups are Catching Up, 2013:  https://www.bloomberg.com/news/articles/2013-02-20/women-who-run-tech-startups-are-catching-up

7. Sheryl Sandberg Explains Why Facebook Covers Egg-Freezing, 2015: http://time.com/3835233/sheryl-sandberg-explains-why-facebook-covers-egg-freezing/

8. Noland, Moran, Kotschwar, 2016.  Is Gender Diversity Profitable?  Evidence from a Global Survey: https://piie.com/publications/wp/wp16-3.pdf

9. Uber diversity report, 2017: https://www.uber.com/diversity/

10. Uber Adds Two Women to Top Ranks Amid Work Culture, 2017: https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-06-06/apple-executive-bozoma-saint-john-said-to-be-joining-uber

執筆:ジョセリン・ホウ