「グリーン・ジャイアント」から学ぶサステナビリティ戦略




かつて1970年代、ノーベル経済学賞を受賞した故ミルトン・フリードマン教授は「ビジネスの目的とはステークホルダーへの利益を増大させることに限る」と述べた。CSRに取り組む企業は義務に縛られて行動を制約され、競争力が弱まると論じたのだ。教授は責任ある行動により収益が減少し、ソーシャルグッドを名目に収益を後回しにするリスクがあると結論づけた。1

あれから40年以上が経過した現在、マーケットには新世代の「グリーン・ジャイアント」が台頭し、ビジネス界は様変わりしたように見える。「グリーン・ジャイアント」とは、製品やサービス、事業からの直接的収益が年間10億米ドルを超え、サステナビリティやソーシャルグッドを中心に据えている企業を指している2。現代のグリーン・ジャイアントとして、チポトレ(米国のメキシカンのファーストフードチェーン・41億米ドル規模)やユニリーバ(522.7億米ドル規模)、ホールフーズ・マーケット(米国の自然食品スーパーマーケットチェーン・141.9億米ドル規模)、ナチュラ(ブラジルの化粧品メーカー・26.5億米ドル規模)、テスラ社(米国シリコンバレーを拠点とする電気自動車ベンチャー・32億米ドル規模)が成功を収めている2。各社の取組みは、サステナビリティと収益は矛盾するのではなく、社会・環境・経済的な価値を創造するビジネスの原動力となることを裏付けているのだ。

では「グリーン・ジャイアント」は他の企業と何が違うのか。企業にとって出費と見られがちなCSRを上手く利益に転じた秘訣とは何か。グリーン・ジャイアントにとりサステナビリティとは、オフィスの省エネ対策を立てたり、サステナビリティ年次報告書を作成したりする企業内の一部署にとどまらず、企業理念や使命の中に統合させ、事業全般を通して取り組み、企業文化の根底を成しているのだ。

「グリーン・ジャイアント」に共通する基本要素とは、実行可能かつ利益を生むサステナビリティ戦略を立てていることだ3。サステナビリティ戦略を進めていると主張する企業は少なくないが、漸進的な環境・社会的目標を掲げる短期的な計画であったり、規制や業界基準の遵守に限られたりしている場合が多い。先を行く企業は、サプライチェーンから顧客までを網羅する全般的なビジネス戦略と関連したサステナビリティ戦略を打ち出している。「グリーン・ジャイアント」にとり、サステナビリティ戦略はビジネス戦略そのものなのだ。

全ての企業が「グリーン・ジャイアント」型アプローチを取ることは不可能に思われるが、よりサステナブルなビジネス戦略に少しずつ近づけて行くことはビジネスの観点から見ても有効である。サステナビリティ課題に取り組むことで事業費を削減し、特にサプライチェーン内のリスクを特定し、最終的にサステナブルな行動を信頼し支持する従業員と顧客の忠誠を獲得することが可能となる。このため、真にサステナブルな戦略に基づくビジネスケースを打ち出すことで、収益の増加が見込まれるのだ。

サステナビリティ戦略の策定と実践にあたり、考慮すべき重要事項は何か。

1.企業の事業形態はさまざまで、それぞれ異なった組織体制やサプライチェーン、従業員体系、地理的ベースを持っている。このため各社は独自の方法でサステナビリティ戦略を策定する必要がある3。業界内や地域内に展開する他社を参考にすることはできるが、自社でうまくいくとは限らないことを銘記しなければならない。

2.リソースを集中させる優先課題を特定する。サステナビリティ戦略で成功を収めている企業は、ビジネスにとり重要な課題や活動とサステナビリティの取組みをリンクさせている3

3.企業に価値を創造するサステナビリティ戦略を策定し、株主に伝達する。事業が環境・社会的に好影響をもたらすと同時に、ビジネス価値を高めるようなアプローチを生み出すことに多くの企業が苦心している3。株主からの賛同を得るには、ビジネスの観点からサステナビリティ戦略が価値を創造することを示すのが鍵となる。サステナビリティをコストではなく、収益につなげる上でも有効なのだ。

4.中間管理職を巻き込み、協議していく。サステナビリティ戦略の策定と実行において、中間管理職は重要な役割を果たすにも関わらず過小評価されている。うまく参画が図れない場合、サステナビリティの取組みは暗礁に乗り上げることになる。戦略の実行で重責を負わされることが多いため、往々にして反対に回るのが中間管理職である。参画を促すには、粘り強くコミュニケーションを重ねて行く忍耐力が不可欠である3

5.重点目標に直結した具体的な重要業績評価指数(KPI)を設定し、責任者を明白にする。サステナビリティの取組みを確実に進めるには、進捗状況を管理し測定する必要がある3。企業の中でこの業務にあたる専任の職務を設定すべきである。

1970年代には、サステナビリティ課題の重要性は認識されず、気候変動が次世代を脅かす脅威になるとは考えられていなかった。それゆえ当時はフリードマン教授の理論がビジネスモデルの中核をなしていたことは驚くべきことではない。「グリーン・ジャイアント」の成功が裏付けられている現在、企業がビジネスモデルにサステナビリティの要素を組み込む流れにあり、必要性もあるのだ。企業が競争力を持つにはサステナビリティ戦略が不可欠であり、もはやCSRとは出費を招く些末な活動ではないことを企業は理解する時が来た3

画像クレジット: phoenix.gov

1. The Social Responsibility of Business is to Increase its Profits by Milton Friedman (http://www.colorado.edu/studentgroups/libertarians/issues/friedman-soc-resp-business.html)

2. Green Giant – How Smart Companies Turn Sustainability into Billion-dollar Businesses by E. Freya Williams

3. Corporate Sustainability at a Crossroads – Progress Towards Our Common Future in Uncertain Times (http://sloanreview.mit.edu/projects/corporate-sustainability-at-a-crossroads/?utm_medium=email&utm_source=enews&utm_campaign=susrpt17)

執筆:ジョセリン・ホー