バーコードの裏側




英国とオランダ、フランスに続く形で、オーストラリア政府は現代奴隷法策定に向け、今年初め調査に乗り出した。個人や企業からの意見を募り、先日締め切ったところ、オーストラリア版現代奴隷法の施行について、企業や投資家から概ね賛同の声が寄せられた。

オーストラリア企業は、政府と消費者からさらなる透明性と情報開示、そして責任あるサプライチェーンの確保を求められているが、ファッション業界の取組みの進捗状況はどうか。オーストラリアのNPOバプティスト・ワールド・エイドは「バーコードの裏側プロジェクト(Behind the Barcode project)」の一環として先日「倫理的ファッションガイド(Ethical Fashion Guide)」を発行した。この中で、同国に展開する330ファッションブランドを代表する106社を、強制労働や児童労働、サプライチェーンでの搾取に対するリスク軽減力を基にAからFの6段階に評価した。2013年バングラデシュでのラナ・プラザ縫製工場ビル崩壊事故を受け、最初の倫理的ファッション報告書を発行してから今年で4回目となる。安全な労働環境や生活賃金、奴隷制との決別などを網羅し、縫製労働者の権利擁護に向けての各服飾ブランドの取組みを追跡・評価している。2017年版報告書の主な調査結果は以下の通りである:

  • より多くの企業がサプライヤーリストを公表し、透明性が高まった。2017年版報告書によると、サプライヤーリストの公表に踏み切った企業の割合は、前年の16%から26%へと増加し、社名と住所を併記することで透明性の向上が図られた。ジャーナリストとNGO、労働者や組合はリストを活用することで、企業が主張する労働者の権利擁護に向けた取組みの正当性や、意図した成果に結びついているか、検証しやすくなる。さらに企業に対して労働者と組合が直接苦情や懸念事項を訴え、変化を求めて働きかけることが可能となる。
  • この4年間で、サプライチェーンのより深部にわたるトレーサビリティが着実に浸透している。評価対象となった企業の四分の三以上が、メーカーに直接納入する一次サプライヤー(ティア1)を把握している一方、リスクの多くはサプライチェーン深部で発生するため可視化に遅れが見られる。明るい材料として、ティア1より先のサプライヤーまで特定を進めている企業が増加した。2017年度版「倫理的ファッション報告書」によると、繊維サプライヤー(ティア2)を積極的に追跡している企業は、2013年の49%から81%と増加を見せた。さらに39%の企業はティア2のサプライヤー全社(もしくはほぼ全社)を把握し、これも2013年の24%から増加している。ティア3の原材料サプライヤー(綿花生産農家が中心)まで把握する前向きな進展も見られ、45%の企業が綿サプライヤーまでのトレーサビリティを図り、マルチステークホルダー・イニシアチブであるベター・コットン・イニシアチブ(Better Cotton Initiative (BCI))を通して協働態勢を取る企業も多数に上る。バプティスト・ワールド・エイドのアドボカシー・マネージャーであり、報告書の執筆者に名を連ねているガーション・ニンバルカー氏は「トレーサビリティは非常に重要です。企業がサプライヤーの把握を怠った場合、労働者の権利を擁護しているか確認する手立てを失ってしまうからです。報告書の初版発行以来、トレーサビリティが広がりを見せている点は明るい材料です。原材料の生産から工場に至るまでサプライチェーン全般にわたり、責任をもって労働者の権利擁護を図る企業が増えていることを裏づけているのです」と述べている。
  • 生活賃金(労働者自身とその家族の衣食住や医療ケア、教育など最低限の生活水準を維持するための賃金)。同報告書によると、賃金の改善を図る企業の割合は増え続けている。2013年に労働者への賃金改善を示した企業は11%であったが、年々上昇し、現在は42%に達している。しかしながら賃金水準が依然として生活賃金を下回るケースが大多数であり、賃金改善もサプライチェーンの一部の労働者のみを対象としていることを見落としてはいけない。業界として倫理的サプライチェーンを構築する上で、貧困レベルの賃金が最大の足枷となっている、とニンバルカー氏は付け加えた。労働者が直面している最大の課題として賃金水準を挙げているが、従業員に生活賃金の支給を表明できる企業はほんの一握りである。全ての労働者が生活賃金を受け取ることが最終目標であるが、当面のところ法定最低賃金の支給に向けた取組みだけでも歓迎される。

2017年版「倫理的ファッション報告書」は全体的に明るい見通しを示している。ニンバルカー氏は「レポートの作成段階から参加する企業は毎年増え続けています。積極的に調査に参加した企業は、2013年にはわずか19社(対象企業の49%)でしたが、2017年版レポートでは87社(対象企業の83%)にまで増えました。多くの企業が調査に参加することは有意義であり、報告書は業界としてのベンチマーキング・ツールとして最適であるとの評価を得ています」と述べている。

多くの企業(59%)が前年と比べて評価を上げ、特に最高評価のAを獲得したパタゴニアやザラなど、多国籍企業の取組みを同報告書は高く評価している。ではオーストラリアの服飾ブランドの評価はどうか。評価対象となった106社(うち55社がオーストラリアに本社を構えている)のうち、A以上の評価を受けた15ブランドのうちオーストラリア発祥のものは3社に留まり、ニッチなメーカーであった。コットンオンやケーマートなどの衣料品メーカーには改善が見られたが、Dプラス以下と評されたブランドの四分の三がオーストラリアベースであった。バプティスト・ワールド・エイドのニンバルカー氏は「2013年以降、オーストラリア・ブランドは急速に改善したが、多国籍企業がオーストラリアでのマーケットシェアを拡大する中、まだまだ道半ばであることを調査結果は物語っています。世界規模で展開する大手ブランドは、消費者が衣料品を購入する際、搾取と無縁な商品であることを求めている点を理解し、消費者の期待に添うべく大規模に資金を投入しています。オーストラリア版現代奴隷法の施行が有力視される中、来年の倫理的ファッション報告書の評価にどう影響を及ぼして行くのか、興味深いところです」と述べた。

バンコクで9月26-27日に開催されるCSRアジアサミットにて、現代奴隷制および人身取引について討議する予定。プログラム詳細についてはこちらにアクセスhere。エレベイト社とCSRアジアは、シドニー およびメルボルンにて招待者限定のイベントシリーズを今年後半にかけて展開予定。詳細はメイベル・ウォンまで(mwong@csr-asia.com)。

バプティスト・ワールド・エイドのアドボカシー・マネージャーであるガーション・ニンバルカー氏には、報告書の内容および当記事へのコメントを寄せて下さったことに厚く御礼申し上げます。追加情報についてはニンバルカー氏にご連絡下さい(Gershon.Nimbalker@baptistworldaid.org.au)。報告書全文(英文)のダウンロードはこちらhere。7月27日にメルボルンで開催されるオーストラリア・ファッション・フォーラムの場で「服飾サプライチェーンの透明性」について集中的に討議しますので、ご参加下さい。フォーラムの詳細についてはこちらhere

執筆:メイベル・ウォン