ASEANでSDGs達成を後押しするアグリビジネス




およそ1年にわたるリサーチでの協働を経て、CSRアジアは2冊のレポートを発行するにいたった。ASEAN域内の長期的なサステナビリティの達成に、アグリビジネス(農業関連産業)がいかに根本的な役割を果たしうるかに焦点を当てている。同レポートのターゲットは農業関連企業である。すでに小規模農家との積極的な協働を図っていたり、ジェンダー・エンパワーメントに根差した取組みを意識し、包摂的で斬新なジェンダー変革型ビジネスモデルの導入を模索している企業向けである。

この2冊のレポートは、東南アジアにおけるジェンダー変革と責任あるアグリビジネスへの投資に向けた(GRAISEA)プログラムの一環としてまとめられた。スウェーデン政府からの資金援助のもと、オックスファムが主導し、CSRアジアを含むマルチパートナーが進める同プログラムは、サステナブルで包摂的なバリューチェーンと企業による投資、さらに女性が経済的リーダーシップを発揮することでASEANにある小規模農家の生活の改善を目指している。

アグリビジネスと持続可能な開発目標(SDGs)」は、貧困と飢餓の撲滅や気候変動への対応策、さらに持続的な天然資源・食料・農業を実現しようとする取組みなど、国連が掲げるSDGsの達成に向け、ASEAN域内のアグリビジネスが果たしうる役割に重きを置いたレポートである。

アグリビジネスの幅

食料生産を担うアグリビジネスセクターは、世界各地で雇用と所得の主要な創出源となっている1。アグリビジネスとは耕作地から食卓までを網羅するビジネスの総称であり、農業原料の供給から生産、農産物の加工、さらに最終消費者への流通までをカバーしている。同レポートは水産養殖と混農林業にも触れ、農業従事者や生産者、取引業者、小売業者、投資家、消費者にいたるまで農業サプライチェーンに携わるさまざまな役割を検証している。

世界の貧困層の75% 2を超える人びとは農業を生活の糧としている。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の農業従事者の大多数を占める15億人は女性と小規模農家(耕作地が2ヘクタール未満)でありながら、最大の貧困グループとなっている。アジアでは小規模生産者が食料の80%を供給し、開発途上国では平均して農業労働力の43%を女性が占め、東アジアと東南アジアでは50%近くに上っている。

農業セクターの成長は、他のセクターに比べて貧困の削減に2-4倍の効果があると世界銀行は試算している。アグリビジネスの中で小規模生産者にフォーカスする大きな経済的チャンスとなるのだ。小規模農家の生産性が向上することで新たなビジネスチャンスへの投資が可能となり、購買力を高め、強靭性を備え、将来に向けての貯蓄にもつながる3。世界人口の増加とアジア地域での食料重要が高まる中、グローバリゼーションがもたらす競争圧力と共通経済圏への統合の流れにより、小規模生産者の経済的生存能力と風土や文化の多様性への貢献が脅かされている。

アグリビジネスがSDGsに貢献すべき理由とは

アグリビジネスを含むさまざまな企業に期待されるのは、リソースや能力、創造性を駆使して地球規模の課題に対する真の解決策を講じることである。SDGsの達成はアグリビジネスの利害を左右することは明確である。なぜなら以下の分野横断的な課題全般に関与し影響を与えているからだ。

  • 農村コミュニティにおける生活の改善
  • 雇用とディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)へのアクセス向上
  • 低所得地域における生産性の向上
  • 女性のエンパワーメント
  • 非伝染性疾病や不健康の増加など、死や疾病を引き起こす新たな要因への対応策
  • 自然生態系の保全
  • 経済や社会的衝撃、自然災害に対する最貧層の強靭性の構築
  • アグリビジネスセクターにおける官民連携と、地球および地域レベルのパートナーシップの強化
  • 農地を奪う都市化

民間企業のビジネス活動や投資、イノベーションは生産性と包摂的な経済成長、さらに雇用創出の推進力になると見られている。ASEANにある企業は、経済成長のみにフォーカスするのではなく、包摂的な成長を目指し、環境の持続可能性につながるビジネスモデルを導入し、消費者を含む他の組織の持続可能性を後押しする解決策を講じるような成長戦略を立てる必要がある。

アグリビジネスセクター全般を通し、事業計画の中にSDGsを組み込むメリットは大きい。SDGsに優先的に取り組まない企業、また小規模農家や女性、その他の社会的に置き去りにされた人々のサプライチェーンへの参画を怠った企業は、最終利益や評判を高める貴重なチャンスを逃すことになる。レポートの中では、SDGsが掲げる各目標について、アグリビジネスにとっての課題とチャンスを検証し、すでに一歩先を行く取組みを進めている画期的な企業や事業活動にSDGsの様々な側面を組み込んでいる企業を取り上げている。

増加する食料需要に対応する能力のある上手く規制されているアグリビジネスセクターは、開発目標1(貧困ゼロ)と開発目標2(飢餓ゼロ)の達成に向けた各国の取組みに弾みをつけることにもなる。4協働して協力的なマルチステークホルダー・パートナーシップを構築しなければ、成し遂げることができない大きな課題であり、開発目標17(目標に向けたパートナーシップ)が目指すところである。政府と民間セクター、農業コミュニティがパートナーシップを組むには、「誰も置き去りにしない」長期的な解決策が求められる。ASEAN域内で事業を展開している農業関連企業は、各国政府が優先的に取り組んでいるSDGsの分野を把握しなければならない。なぜなら自社のバリューチェーンに適った開発目標を選択することが可能となるためだ。

SDGsへのコミットメントを通し、農業関連企業は協働して同セクターの将来像を描き、ディーセントワークの創出と労働者への公正な待遇、納税義務の履行と地域コミュニティへの投資により信頼を勝ち取ることができるのだ。それぞれの課題とチャンスを抱える開発目標は、アグリビジネスセクターの堅調な成長と成功に直結する重要性を帯びている。SDGsがアジア地域と世界で確実に達成されるには、民間セクターが責任を持って政府との協働を図る意志を持つことが不可欠である。

企業は本レポートを活用し、各社の事業に最も関連のあるSDGsを評価し、特に小規模農家の包摂やジェンダー平等などインパクトの大きな課題を洗い出し、さらにSDGsを事業戦略に組み込むチャンスの特定を図ることができる。

レポート全文(英語)はこちらをクリック Click HERE to read the full report.

レポートに関するご意見や今後協働しての取組みにご興味のある方はレベッカ・ウォーカー・チャンまたはニック・ウェリアス(nick.warelis@csr-asia.com)までご連絡下さい。

レポートに加えて、以下の企画にもご参加下さい。

無料ウェビナー

ASEANにおけるアグリビジネス」

リサーチ結果と企業の事例についての要点をまとめています。こちらにアクセス Webinar – Agribusiness in ASEAN

2017年5月17日にCSRアジアとビジネス行動要請 (BCtA)が共催したウェビナーでは、イースト・ウェスト・シード、フリースランド・カンピーナ、ダブルAの3社を取り上げ、ASEANで小規模農家の参画を進める際のプラスおよびマイナス要因を共有し、包摂的ビジネスモデルがいかに利益をもたらすかを検討した。

「アグリビジネスとSDGs」 日時の詳細は後日決定

責任あるアグリビジネス・ラウンド・テーブル・シリーズ

アグリビジネスが直面している喫緊の課題を討議する会員企業限定のラウンド・テーブル。

以下の取組みを図っているか、あるいは今後図る意志のある企業を対象としている。

  • 小規模農家とのより積極的な協働
  • ジェンダー・エンパワーメントに根差したアプローチ
  • 包摂的で斬新なジェンダー変革型ビジネスモデルの導入

今後お近くで開催されるラウンド・テーブルの詳細についてはCSRアジアまでお問合せ下さい。

1. AGS: Agribusiness development – FAO

2. Agriculture and Poverty Reduction – World Bank

3. On World Food Day, Farmers Should Come First – OneAcre Fund

4. Agribusiness rules lag in agriculture dependent countries – World Bank

執筆:レベッカ・ウォーカー・チャン