持続可能なビジネスの将来性




世界は変革の中にある。経済は困難な局面を迎え、世界情勢は不安定化している。さらに環境は悪化し、社会格差が広がり、テクノロジーが急速な変化を遂げる中、企業はかつてないほど脆弱な立場におかれている。気候変動に付随するリスクなど、避けることのできない危険性への適応が急務であるが、新たなリスクを予測することはますます困難となっている。

将来を見通し、予測される事象が及ぼすショックやストレスからの悪影響を最小限に食い止めるよう先手を打ち、プラス面を活かすことが将来性を担保(future-proofing)することになる。いかなる先手策も、地球の持続可能な開発への貢献を中心に据えるべきである。

起業のプロセスは大幅にスピードアップしたが、事業に失敗するリスクも同様に高まっている。ソーシャルメディアを通して新製品やサービスを効果的に宣伝できる一方、同じチャンネルを通して顧客の不満や汚職事件、環境破壊、さらにコミュニティ同士の対立などのニュースも瞬く間に拡散してしまうのだ。

持続可能なビジネスとは良いビジネスであり、増益を図りつつ社会への価値を創造することができる点を数多くのリサーチ結果は示している。目的を持って利益を生み出すことを目指す企業は、たゆまぬイノベーションが鍵となることに気づかされるのだ。サステナビリティに関連したイノベーションは、製品と業務プロセス、ビジネスモデルという3つのレベルにわたり企業の競争力を新たに高めることができる:

  • 価値を創造するには、顧客や社会からのニーズと要求に基づく持続可能な選択肢に焦点をあて、革新的な製品とサービスにつながる新たなビジネスチャンスを目指すべきである。
  • 業務プロセスの再設計に乗り出した企業は、効率性と競争性・包括性に重きをおき、バリューチェーン全般を含む事業全体での業務改善を図っている。
  • その一方で、持続可能なビジネスモデルは、企業の事業展開の方法や、新たな企業理念に沿った形で解決策を新たに講じていく力を大きく左右する。

どのようなアプローチをとるにしろ、長期的な事業の継続にはイノベーションとリスク管理が鍵となる。しかしながらイノベーションとは組織全般の基底をなす要素ではなく、追加的に増やしていくものだと位置づけている企業が大多数である。社会・環境課題の重要性が増す中、追加的なイノベーションでは企業や産業、経済がうまく適応し将来的に存続するための有効策とはならないのだ。

多くの企業はすでに環境・社会・ガバナンス(ESG)のリスク管理に乗り出している。しかしながら、先行きの不透明さが増すリスクには対応し切れていないのが現状である。将来的に起こりうるリスクを予測するのではなく、過去のリスクに基づく推測の域を出ないことが多いためである。企業はリスクに対してより広い視野を持ち、コンプライアンスに主軸をおく守りの姿勢から、先を見通した攻めの姿勢に転じる必要がある。

リスクを戦略的に捉え、より広く、深く、綿密な対策を練ることで、企業はスピード感を持って注力することができる。リスク対応力が向上し、チャンスを掴むイノベーションにつながるのだ。競争力が高まることでより確実性の高い計画を立て、事業の将来性が担保されることになる。

企業はESGリスクを予測すると同時に、イノベーションの体系化を図る必要がある。持続可能なビジネスの将来性を担保する唯一の方法なのだ。企業はこうしたプロセスを管理することで、将来性を視野に入れた戦略を立てることができる。

持続可能なビジネスの可能性を広げるには、以下の10点に基づく戦略が有効である:

  1. 社会的目標を設定する:企業が長期的に事業を継続させるには、収益を上げる以上のことが求められる。ステークホルダーは社会的貢献と共通価値に期待しているのだ。企業は競争性を確保する戦略に社会的目標を盛り込み、社会・環境ニーズに応えるよう資産と専門性を活用すべきである。提供している製品とサービスだけでなく、人々やコミュニティ、環境への貢献について周知を図ることも有効である。
  2. 視点を変えてトレンドを追跡する:将来を形作るトレンドの中には予測がつきやすいものもある。CSRアジアが手がける年次報告書「Tracking the Trends(トレンドの追跡=略称『TTT』」において気候変動や水、労働問題、人権は常に主要課題としてランクインしている。規制や消費者マインド、大規模なNGOキャンペーンに大きな影響を及ぼすこれらの課題を把握し対応すべきである。事業活動から定期的に視点を変え、将来を左右する課題に着目してみよう。
  3. 影響力のある要因を追跡し将来的な需要を予測する:変容する社会的要求にインパクトを与えうる誘因やステークホルダーに目を配るべきである。ソーシャルメディアにより習慣が劇的に変わり、結果的にさまざまな企業が影響を受けている。ビジネスに間接的な影響力を及ぼしうる要因や人物に注意を払い、業界に必ずしも関連していないと思われる事柄でも把握するよう努めるべきである。表立って出てこない人々の要望もくみとり、変革を予測しなければならない。これには想像力を働かせ、業界のトレンドに精通する必要があるのだ。
  4. ステークホルダーに耳を傾けつつ、全てを信用しない:将来的に人々が何を期待しているか見つけるには、継続的なステークホルダー・エンゲージメントが鍵となる。特に時間をかけて若者と話し合うことが重要である。常にステークホルダーの意見を真摯に受け止め、期待に応えるよう努める。しかし未来を予測する際には信用すべきではない。ステークホルダーの理解を深め、思考を見抜き、想像力を働かせて将来的に全く違う行動を取る可能性を探るべきである。
  5. 将来のリスクを評価する:将来起こる可能性のある問題を予見できないとしても、準備することは可能である。ビジネスにとってのリスクや障害となりうるポイントを特定する。これらのリスクには人々やシステム、コンプライアンス、ガバナンスが含まれる。さらに変容する若者の期待、資源を巡る対立、深刻さが増す気候変動や人権侵害などに起因するリスクの予測はより一層困難である。シナリオ別に計画を立て、自らの未来学者となろう。
  6. イノベーションを推進する環境を整える:リーダーに追随するだけでは成功をおさめることができない。創造力を駆使し、製品やサービス、業務プロセス、ビジネスモデルを生み出す新たなアイディアを試すイノベーションが必要である。社会的ニーズに応え、事業を展開する新たな方法を奨励し、その有効性を測る上で不可欠な実験がうまく行かない場合にも咎めるべきでない。変革を推進力とする機動力あるマネジメント体制を構築する。
  7. 共創に向けた戦略的パートナーシップを構築する:お互いの専門性で相乗効果を生むような外部パートナーとの協働を図る。競争ではなく、協働によってインパクトが高まる可能性を理解し、そのチャンスを探る。企業と社会に価値を創造する変革につながるマルチステークホルダー・イニシアチブに貢献する。
  8. 敢えて自社の世界観を社外の意見とすり合わせる:自社の考えや意見に酔いしれて組織として周りが見えなくなることは、いかなる企業にとっても命取りとなる。社員と違う考えを持つ専門家やコンサルタント、イノベーターのアドバイスを仰ぎ、要となる戦略に関する話し合いへの参画を働きかけるべきである。事業が将来的に生き延びるチャンスを広げるべく、未来志向型のワークショップを展開する。
  9. 自らの将来を形作る:ただ手をこまぬいて世界の変革を見守る必要はない。企業自身が変革を起こす主体となりうるのだ。社会的目標に焦点をあて、変革の理論を構築し、ソートリーダーシップで大胆に発信し、将来のトレンドを形成する一翼を担うことができる。企業自らが影響力を発揮できるのだ。
  10. ブランドから原点の目標に立ち返る:あるブランドが何十年も続いてきたからといって、マーケットの現状に適っているとは限らないのだ。かつてないスピードで変革が起きる中で、企業はESGリスクを管理し、革新的で有益な解決策を打ち出し、持続可能な開発に貢献しなければならない。結局のところ億万長者になる最善の方法は、数えきれない人々を支援することである。

「持続可能なビジネスの将来性」というメインテーマのもと、9月26-27日に開催されるCSRアジアサミット2017では、この記事で提起されたさまざまな課題について、現場に精通した専門家やソートリーダーからの知見を共有する。(サミットの詳細はこちらhere)。

執筆:リチャード・ウェルフォード