よりスマートな事業展開へ:「社会への価値」の定量化




従来よりも「グリーン」なサプライチェーンを目指し、再設計を図る企業が増えている。社員のボランティア・プログラムを通して社会・環境的テーマに取組み、世界の裏側での人権問題に関してもロビー活動を展開しているのだ。ますます多くの企業や社会事業が、リスクの把握と、社会・環境・経済的にプラスかマイナスかという尺度での「価値」の定量化に乗り出している。しかし真に着目すべきは正確性と透明性、有効性である。

企業の社会的責任(CSR)の解釈は多面的であり、同一解釈は不可能である。多くの企業は真摯に取り組んでいるにも関わらず、不適切なアプローチや後手に回った対応により、企業の競争力は高まるどころか、かえって損なわれてしまうことがある。なぜならCSRが自社および社会全般にもたらす価値について、十分に把握してないという自覚から、取組みにも及び腰となる経営陣が少なくないためである。リサイクルやエネルギー効率を高めるガス・電気・水道インフラの改善に向けた投資など、定量化が可能な成果がすぐに上がるケースもある。しかし多くの場合、社会・環境的投資がもたらす長期的利益やメリットは明確ではない。

ビジネス活動が社会と環境に及ぼす「真の」インパクトを測定することは困難であるが、企業が競争力と正当性を保つには例外なくインパクトの測定は不可欠である。企業としていかに社会への貢献度を測るかを明確にすることが先決である。財務実績などの重要業績評価指標(KPI)や事業の生産性にとどまらず、例えば新規雇用創出によるメリットや天然資源の利用に付随するコストなどを網羅した上での測定が必要である。

価値の定量化について、他の企業の取組みも参考となる。化学製品の製造とマーケティングを手がける世界最大手のBASF社は、自社の経済・環境・社会的インパクトを金額ベースで評価する方法を編み出した。PwCの「総合的インパクト管理・測定(‘Total Impact Management and Measurement (TIMM)’)」フレームワークに倣い、BASF社は独自の取組み「社会への価値(‘Value to Society’)」を策定した。

「社会への価値」がBASF社とステークホルダーにもたらすメリットとは

「社会への価値」は広い観点からBASF社の貢献を考察し、バリューチェーンに沿って直接・間接的なインパクトを測定することで自社の影響を包括的に展望することが可能となる。

この結果、従来よりも戦略的な意思決定を行うことができるようになる。例えばBASF社は、新たに建設する製造工場が社会に与えるインパクトをさまざまなシナリオに照らして算出できるのだ。このような投資は、建設場所により異なる結果を生み出す。また、新工場建設は雇用の創出により価値を高めるが、原材料の調達先によっては二酸化炭素排出量による環境負荷が大きくなる。例えば、再生可能エネルギーを利用してヨーロッパの工場で製造された材料を輸送する必要がある場合のカーボン・フットプリントは、再生可能エネルギーを利用しないが、地元で原料を調達するアジアの工場より大きくなってしまう可能性があるのだ。企業活動の及ぶ範囲と長期にわたるインパクトを正確に評価するには、それぞれの角度から慎重に検討しなければならない。このようなアプローチにより、BASF社のステークホルダーは、持続可能な将来への貢献を目に見える形で評価することが可能となる。

BASF社は以下の3グループに「付加価値」を分類するモデルを活用している。

  • 経済的:純利益、利息、減価償却(有形・無形)
  • 社会的:税・賃金・手当、人的資本(自社事業のみ)、安全・衛生
  • 環境的:大気汚染、温室効果ガス(GHGs)、土地利用、水利用、水質汚染、固形廃棄物

「社会への価値」は包括的なフレームワークを策定した画期的アプローチである。

次に金銭的価値を普遍化した方法で算出することで、サプライヤーから事業者、顧客にいたるまでのバリューチェーン全般で、製品の適用や使用方法にかかわらず分析と比較が容易となるのだ。

他の企業にとっての価値とは

BASF社のようにインパクト測定のツールを活用することで、企業は情報に基づく選択を行い、適材適所の事業を展開し、バリューチェーン全般にわたり製品とサービスの品質と効率を改善することが可能となる。この結果、顧客の選択肢が広がり、人々が購入する車や日常的に使うシャンプー、さらには居住や仕事の場となる建物も環境と社会に優しいものとなるのだ。

BASF社の「社会への価値」の取組みは、企業がいかに差別化を図り、よりサステナブルで賢明な選択と投資に向けコミットする方法を示している。あらゆる業界で、製品やサービスの開発に取りかかる際の出発点とすべきである。サステナビリティという概念を企業文化に反映させ、本業を通してCSRに優先的に取り組み、より責任ある業績につながるよう取締役会レベルでの理解を図ることができるのだ。

* 5月22~25日にデトロイトで開催される「サステナブル・ブランド国際会議(Sustainable Brands Conference in Detroit)」の会期中、BASF社は5月25日の分科会「社会への貢献アプローチ:バリューチェーンを通し企業の社会貢献を測定する画期的方法」の中で取組みを紹介する。分科会についてはこちら「A Breakthrough Value to Society Approach: How to Calculate a Brand’s Contribution to Society along the Entire value Chain.」

詳細についてはBASF社のサイトを参照BASF – Value to Society Approach 、またはレイチェル・フレィシュマン氏(アジア太平洋・総務 サステナビリティ啓発・広報部長)までrachel.fleishman@basf.com

執筆:ニック・ウェリアス