小規模生産者に役立つ認証とは




認証済み製品のみを調達した場合、小規模生産者に悪影響を及ぼすのか。企業にとり認証済み製品に限って調達することは最も責任ある方針となるのか。

草の根団体や現場に精通した専門家は、認証済み製品の大量調達を迫られている企業により、資金面で認証プログラムへの参加が難しい小規模農家に対する社会的公正という課題が浮き彫りになる可能性を指摘している。

自然保護団体や責任ある企業、政府の尽力にもかかわらず、東南アジアおよびメコン川流域の生態系は悪化の一途をたどり、生活の糧として頼っている人々が脅威にさらされている。認証を含む現行の持続可能な調達方針は不十分であるが、ステークホルダーとの協働態勢と参画に基づくことで解決策につながる可能性を秘めているのだ。企業やコミュニティ、行政当局、さらにNGOは協働態勢をとり、認証プログラムが環境保全と小規模生産者の生活保護、さらにサプライチェーンのリスクから民間セクターを守りつつ、土地の接収や大規模な土地転換などのマイナスな動きへの対抗措置となるよう努めなければならない。

小規模生産者の参画により生計が向上し土地利用が改善するチャンスとなり、積極的に推進すべきだとする意見が多い。ベトナムとラオスでサステナビリティを管理するマネージャーの中には、既定路線であるコンプライアンスから踏み込み、小規模生産者と直接関わりをもつ(少なくともより深く関わる)という取組みに乗り出した者もいる。森林管理協議会(FSC)と持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)は、環境および社会課題に対して持続可能な解決策を探った成功例であり、参画型の認証プログラムとして画期的な取組みである。両プログラムとも、市場アクセスの改善から地域コミュニティが益する上での制約を理解し、認証プログラムへの参画により小規模生産者の持続可能な生計につながり、より多くの恩恵を浴するような解決策を探るべくリソースを投じている。

NGOや学界、さらに小規模生産者からもアジア地域における小規模生産者の森林認証が抱える様々な問題点が指摘された。小規模生産者が木材取引から利益を上げることを阻む要因として、生産者の現状と市場の要件・基準の食い違い、小規模なコミュニティベースの事業立ち上げを阻む不適切な規制環境、さらにパートナーシップへの積極性の欠落が挙げられた。

上記に照らし、自発的な認証を通してサプライチェーンに小規模生産者を取り込むことを目指す企業は以下の点を考慮すべきである:

  • 小規模生産者の明確な定義づけを行う:小規模生産者とは均質な集団ではなく、実に多くの民族集団を抱え、その規模と背景も多様であるため、定義づけが難しいケースもある。地域の実情に照らし明確で調和の取れた定義づけが求められる。例えばRSPOは、50ヘクタール未満の農地所有者を小自作農、それ以上の者を契約農園と明確に区分した。
  • 実情を反映した基準を策定する:小規模生産者に有効な認証プログラムを目指すには、基準はシンプルかつ実情に照らして策定されなければならない。ある程度の柔軟性を持ち、生産者の状況に適合できるよう補助条項を盛り込むべきである。生産者の意欲を削ぐことがないよう、説明文をメインに簡潔な指標のチェックリストを策定する必要がある。
  • 実用的かつアクセス可能:簡潔な言葉遣いを心がけ、携帯アプリやオンライン・テンプレートでの認証、視覚教材などアクセスしやすいテクノロジーを活用する。
  • 包括性が鍵となる:貧困撲滅や女性の権利確保、公平な利益の配分など、社会的目標を盛り込む。
  • 相互理解を図る:理解の共有を図り、認証プログラムから双方が益することを明確にし、自社のアプローチを明記する。応分の負担をしつつ信頼を築き、長期的にコミットし、柔軟性を持つ一方で期待される成果を管理し、小規模生産者に対する支援策の選択肢(能力開発やマーケットアクセスなど)およびコミュニティに提供できないこと(健康と教育など)への理解を図る。
  • コストの削減:認証プログラムに付随するコスト削減を図ることで、金銭的かつ技術的にアクセス可能な小規模生産者向け認証システムを支援する。第三者認証の代替策(自己評価や第二者監査など)を模索し、コスト分配を可能とするグループ認証を認め、個人生産者レベルでのコスト負担の削減を図る(森林協同組合アプローチなど)。
  • 知識を高める:認証コストを将来的に削減するには、地域コミュニティの能力を高め、地域レベルでの知識とスキルの移転が有効である。認証プロセスへの障壁や認証を阻む課題を特定することで、能力を高めさらなる解決策を見つけることにつながる。
  • 市場アクセスの向上を促進する:小規模生産者からの認証済み製品への安定した市場を確保しつつ、依存を防ぐ。
  • 政府との取組み:土地と森林資源のグッドガバナンスおよび明確な土地保有権は、小規模生産者の認証にとり大きな後押しとなる。官僚的システムは高くつくため、合法性を示すことは小自作農には負担となる。政府は法的・規制的な枠組みを整備し、地域の森林資源の質を評価する。企業は他の関係者と協働し、国内法の枠組みが機能するよう声を上げていくべきである。
  • リンクを広げる:企業は政府からの支援を探ると同時に、小規模生産者との関係を築いた国内外の公式・非公式組織からの支援を模索することができる。このために、十分な人材を充てるべきである。
  • 認証機関との協働:認証機関は体系的変化を促し、商業市場においてセクターを隔てる障壁を取り除き、さらに世界市場での認証済み製品の販売促進を図ることができる。
  • コミュニケーション:誤解を招くような宣伝を行わず、小規模生産者の課題について消費者を啓発する。
  • 製品サプライヤーを再検討しインパクトを高める:認証プログラムへの参画から益する可能性のあるコミュニティや小規模生産者団体を積極的に探し、サプライチェーンに取り込む。

CSRアジアが手がける今後の取組み

CSRアジアはオックスファムと協働し、CSR基準・ガイドラインの実践と包摂的なバリューチェーンの推進に向けた資料とツールキットを作成し、画期的な方法で男女を問わず小規模生産者の参画に焦点を当てている。

  • 責任ある農業関連ビジネスのための円卓会議シリーズ:CSRアジアは、アジア太平洋地域の農業関連企業を対象に双方向の円卓会議を開催し、包摂的なビジネスとジェンダー変革型ビジネスモデルの実践について協議している。実務者向けにカスタマイズされた実用的アドバイスを提供し、新たな包摂的なビジネスチャンスにつながるよう弾みとなることを目指している。詳細についてはクレイリア・ダニエルまでcdaniel@csr-asia.com
  • ソートリーダーシップ・レポート:「小規模生産者の包摂を読み解く」(邦題仮訳)と題する研究レポートを近日中に発表する予定である。10の事例研究を通し、農業セクターの大手企業が、男女の別なく小規模生産者に対して責任ある包摂的なアプローチをとる上で有効なビジネスケースと原動力を特定する。本レポートはJollibeeやStora Enso、Univanich、Unifruttiなど、さまざまな農業関連企業のバリューチェーンをカバーしている。詳細についてはCSRアジアのサイトを参照 http://www.csr-asia.com/publications.php
  • CSRアジア・サミットでの協議:「持続可能なビジネスの将来性」というメインテーマのもと、9月26日~27日にバンコクでサミット(2017 CSR Asia Summit)が開催される。毎年アジア太平洋地域の企業・ブランドから幹部クラスの約500人が集い、企業がいかにサステナビリティに関連した課題の解決を図ることができるかを協議する場となっている。ジェンダーと農業関連ビジネスについても取り上げ、世界や地域のベストプラクティスを示しながら、ファシリテーターが進行役となりディスカッションやワークショップを展開していく。サミットの詳細についてはサイトを参照 http://www.csr-asia.com/summit2017/

当記事の執筆にあたり、Salwoodのステファン・ミィジレー氏とRECOFTCのデビッド・グリテン氏より情報提供いただいた。

画像クレジット: FSC Australia

執筆:クレイリア・ダニエル