現代版奴隷制への懸念の高まり




英国のマスコミは先週、現代版奴隷制度について大きく取り上げ、報告件数の倍増に関する記事が多くの紙面を賑わせた。米国では学生たちが大統領に請願書を提出し、安価な労働力として人身取引されて来る推定17,500人に対策を講じるよう訴えた。ガーディアン紙は、マリファナ農場で横行している現代奴隷制も報じている。

政府はさまざまな戦略を駆使して対応策を練っている。英国は世界で初めて「現代奴隷法」を制定して企業のサプライチェーンの透明性について法律で規定し、企業はオープンな形で同問題への取組みに乗り出している。

現代版奴隷制度に該当する事例の特定と共有が進み、闇に葬られることはなくなりつつある。多くの企業は周到な対応策を導入し、このような人権侵害に付随するリスクの特定と軽減を図っている。リスクを特定する運営グループを立ち上げ、社員への啓発プログラムを展開し、さらにサプライヤーに対して現代奴隷法の遵守を確認する同意書を導入しているのだ。

2月にはフランス議会が企業を対象に「警戒義務づけ法」を可決した。企業は事業とサプライチェーンで人権侵害が起きていないか監視を求められている。さらに企業はリスク軽減策の効果を測定し、リスク年次報告書も発行する必要があるのだ。

リスク報告書には、企業のみならず子会社とサプライヤーが直面している課題も特定し、盛り込まなければならない。リスクを特定した上で、人権侵害リスクの軽減に向けた対応策と、潜在的リスクを追跡する警戒システムの導入について説明する必要がある。企業はデュー・ディリジェンスを果たし、サプライチェーン内での強制労働の根絶を図り、法律に照らして導入する監視方針の有効性を評価しなければならないのだ。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)が目指している現代版奴隷制度の根絶に関連し、さまざまな取組みが世界的に進められている。多くの場合、人道危機に端を発する奴隷制の規模について、国際社会はようやく気づきはじめたのだ。

各国政府は奴隷制度の現状を把握し可視化する奴隷制フットプリントに乗り出し、民間セクターに対して世界への貢献度を高めるよう促している。先進国が企業に対して人権擁護の義務化を本格的に進めるのに伴い、あらゆる形態の奴隷制度への闘いは世界規模で変容している。

人身取引と現代版奴隷制度の根絶に向けて民間セクターが重要な役割を担っている。製品とサービスを通して人権侵害に加担しないよう確認することができるからだ。人身取引は非常に収益性の高い犯罪であり、斡旋業者は現代版奴隷制を悪用して自由市場の安定を脅かしている。世界各国で2,100万人が隷属状態にあると推定されるが、うち68%は労働力として搾取されている。

企業はまずサプライチェーンのどこにリスクが存在しているか評価する必要がある。人権侵害の多くが従来の監査が届かないサプライチェーンの深部や企業が直接展開していない国々で起こっているため、難儀する可能性がある。さまざまなステークホルダーを巻き込み、最も深刻な現代版奴隷制のリスクがどこに、そしてサプライチェーンのどの段階にあるのか特定しなければならない。企業がリスクを「隠蔽」したり無視したりすることがないようにNGOは目を光らせているため、潜在的リスクについて真摯に取り組むことが重要である。透明性とは、企業が完璧であることを求めているのではなく、企業がリソースを最大限活用し、責任を持ってあらゆる手を尽くしていることを求めているのだ。

企業はより広い社会的責任の取組みの一環として、いかに製品やサービスが奴隷制に加担しないよう努めているかを「語る」べきである。業績は徐々に上向き、短期間では克服できないリスクがあることも認識しなければならない。企業は、ライバル企業を含めて他の企業やステークホルダーと協働し、奴隷制の根絶を図っていることを示す必要がある。

人権や現代版奴隷制の問題について初めて取り組む企業は、まず以下から始めるべきである:

  • 企業の中で、方針を策定し、組織内での啓発活動を展開し、サプライヤーに要件を伝え、報告書の作成を手がける担当者を決める。
  • 企業が提供している製品とサービスに携わるサプライチェーンの全容を把握し、奴隷制度に関連したリスクもつかむ。
  • 特定したリスクについて想定される回答を揃え、現代版奴隷制度の問題が発生した場合の対応策となる戦略を策定する。

9月26日~27日にバンコクで開催されるCSRアジアサミットの場で、現代版奴隷制度および人身取引について討議する予定である。プログラム詳細はこちらにアクセスhere

執筆:リチャード・ウェルフォード