Baseが進める新たな低所得者向け住宅と災害復興の取組み




世界で最も自然災害に見舞われやすいアジア太平洋地域。同地域の都市部に居住する5.7億人のうち、約3割は不適格で危険な住宅で生活している。このため、持続可能な開発目標11により状況が改善することが期待される。なぜなら2030年までにすべての人々が安全かつ適格な住宅を適正価格で手に入れるよう促すと同時に、地域の資材を活用し、強靭性と持続可能性を兼ね備えた住宅の建築に向け、後発開発途上国に対して財政・技術的な支援も呼び掛けているためである。

2012年に設立されたBaseは、すべての所得層を対象に持続可能で強靭かつ手頃な住宅というコンセプトを市場に導入することを目指し、特にアジア太平洋地域の都市部に居住する貧困層に焦点をあてている。ヒルティ財団と国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)の連携から生まれた同組織は、建築・建設セクターで培われたヒルティグループの卓越した技術とビジネススキルを活用し、極めて大きな住宅ニーズに対してスケールアップ可能な解決策を講じるよう研究を進めている。ヒルティ財団が資金を提供しているが、財政的に独立した社会事業に成長することを目指している。

Baseのマネジング・ディレクターであるコリーナ・サルザー氏は、CSRアジアとのインタビューの中で、フィリピンを手始めに、Baseが進めているアジアでの住宅セクターの変革について紹介した。

アジアのコミュニティは貧困や不確実な土地保有権、自然災害という多次元の脅威に晒されている。建設業の二酸化炭素排出量は全産業の中で最大であり、これらのコミュニティが直面している気候変動リスクをさらに深刻化させている。低所得コミュニティが抱える住宅問題を解決するには、これらの複雑な脅威の解決を図り、アジア地域の住宅ニーズを多方面から捉え、対応していく必要がある。

被災後は迅速な再建と膨大な数の被災者への支援が急務であるが、多くの場合、長期的な変革と脆弱性の抜本的解決を図る取組みにつながっていない。脆弱性や低所得、被災後の住宅ニーズに対して多元的に取り組むには、技術やコミュニティ、経済、環境、ガバナンスについて包括的に考慮する必要がある。フィリピンでBaseが展開しているプログラムが目指している取組みは以下の通りである。

  • 環境保全型の技術:Baseは設計および建築方法を通してイノベーションを図る研究開発に投資し、バリューチェーンに焦点を当て、持続可能な方法で生産・加工された原材料を地域で調達することに重きを置いている。フィリピンでは深刻な住宅ニーズに対応するために、スケールアップを実現する建材として竹を活用することにした。
  • 地域コミュニティの参画:コミュニティからの承諾を取りつけ、地域の能力強化を進め、生計手段を支援するため、Baseは都市部のスラム住民を含めコミュニティが設計および建築段階から参画するよう働きかけている。
  • 公営住宅の最低基準引き上げに向けた啓発:低所得層向け住宅は多くの場合、地域の建築基準の適用外となっている。Baseはフィリピンの国家建築基準法に準拠する新たな住宅システムを策定し、基準法の中に新システムを組み込むよう啓発を図っている。

持続可能な原材料を地域で調達することでコミュニティのニーズに応える住宅

従来の建築技術では多くの場合、都市部貧困層の経済・社会的要求を満たすことができない。2012年に設立されたBaseは、このギャップを埋めるべく、スケールアップ可能な建築コンセプトを特定し、代替となる建材の研究・試験に初めの2年を充てた。フィリピンでは持続可能かつ地域で手頃に調達できる原材料である竹を骨組みとして活用することにした。Baseは、コスト効率性と耐災害性、環境性能、居住者の快適性、さらに地域のスキル強化の可能性に優れている住宅コンセプトを生み出した。竹は従来の木材より10倍早く、わずか3年で伐採でき、耐久性も兼ね備えた再生可能建材である。フィリピンで豊富な竹は、長いこと農村部で住宅建築に活用されてきたが、安全な建築に必要な品質の竹は限られている。そこでBaseは、フィリピン全土で竹をベースにした建築を実現するインクルーシブなバリューチェーンの支援を目指している。

伝統的な竹ベースの建築手法と現代的な技術・デザインを融合し、最大風速66メートルまで耐えられる最先端の住宅コンセプトを生み出した。プレハブやモジュール型住宅システムにより、スケールアップ可能で低コストかつ高性能な住宅を農村部と都市部で建設することが可能となった。Baseは2017年末までにフィリピン10州で500棟の建設を目指している。

地域のコミュニティと経済のエンパワメントを図る住宅

Baseは竹のバリューチェーンを地域に確立し、市場ベースで住宅問題を解決することで、長期的な持続可能性およびスケールアップの確保を目指している。竹の生産・加工さらにプレハブ業で雇用を創出する起業家を支援し、住宅建設に向け地域のパートナー団体と協働している。市場ニーズの高まりに応えるべく、起業家たちは骨組みとしての強度と品質を備えた竹を生産し、品質管理されたモジュール型住宅の部品を製造している。これまで200の生産者と労働者がトレーニングを受け、これらの起業家の元で就労を果たしている。

「これまでの経験から、竹をベースとする建造物は低所得層から受け入れられだけでなく、参加型プロセスを通して社会全般の状況を改善しエンパワメントを図る重要な起点となっている。政府や国際機関、エンジニア、建築士、都市計画家、社会事業など多様にわたるステークホルダーとの協働態勢でニーズに応えることで、コスト効率のよい竹の建造物をスケールアップする大きな可能性を秘めている」と、Base Builds PTE LTDのマネジング・ディレクターであるコリーナ・サルザー氏は述べている。

Baseを含むさまざまな組織は、アジアにおいて持続可能で災害に強い住宅や学校の建設を大規模に支援している。3月28日にタイ・バンコクで開催されるアジア災害フォーラムにて詳しく討議を行う予定。フォーラム詳細についてはこちらhere

執筆:ヘレン・ルース