持続可能な開発目標SDGsの1年目でのベストプラクティス




2015年9月に採択された持続可能な開発目標 (SDGs)は、地球規模での変革と持続可能な開発の実現を目指している。17の目標と169のターゲットからなるSDGsは、貧困撲滅や環境保全、ジェンダー平等など広範なテーマを網羅し、世界の変革を図るという非常に野心的なものである。

採択から一年となる今年9月に香港で開催されたCSRアジア・サミットの場でも、SDGsに関する個別のパネルディスカッションを設け、各組織がいかにこの地球規模の取組みを実践しているかについて討議された。さらに民間セクターが手がける成功事例に焦点を当てるSDGs「掲示板」を設置し、先進的な企業の取組みを壁に貼り出し、目に見える双方向の形で紹介した。

パネルディスカッションでは、ファーウェイ、H&M、ノボザイムの各社と、国際環境NGOのコンサベーション・インターナショナルから登壇者を迎え、SDGsへの取組みがもたらすチャンスと進捗状況の測定について各社の経験を共有した。事業にサステナビリティを組み込み、ステークホルダーやビジネスパートナーとの協働を図る重要性についてパネリスト達は討議を行った。製品のサプライチェーン全般を持続可能な方向に修正する中で、高品質を保ちつつ一般市民にとり手頃な価格の製品を提供する重要性についても議題にのぼった。H&Mからは、各社の経営目標や理念と最も関連性の高いSDGsを選択する必要性が指摘された。さらにSDGsの取組みを事業モデルの中で進める際は、企業の進捗を測定する指標として活用すべきだとの点でパネリスト達は意見が一致した。各社から以下の優良事例が紹介された。

  • H&Mは「開発目標12:責任ある消費と生産」の実現に向け、古着回収プログラムを世界的に展開
  • ファーウェイは「開発目標4:教育」を含む複数のSDGsの達成に向け、テクノロジー業界の参画方法についてのソートリーダーシップ・ペーパーを作成
  • ノボザイムは「開発目標15:陸上生態系の保護」に向け、日常生活品の化学物質の代替として酵素を活用する画期的方法を研究
  • コンサベーション・インターナショナルは「開発目標13:気候変動対策」の一環として、著名人とタイアップして短編ビデオ「自然は語る」を制作、キャンペーンを展開 (ビデオはここにアクセス“Nature Is Speaking” )

4社から寄せられたSDGsへの取組みから、企業が日常業務とCSR戦略を通して地球規模での変革を進めていることが分かる。取組みの成功を左右するのは、企業と社員からの全面的支持と、各企業の理念やビジョンに見合った活動に修正するである。CEOや経営陣が賛同することで、企業の経済発展を図りつつ、変革を浸透させる活動に弾みがつくことになる。

SDGs掲示板にはサミット参加者が以下のような取組みを含むさまざまな活動を紹介するメモを張りつけた。

  • 「開発目標3:健康と福祉」実現に向けた、ミャンマーで石油探査生産企業PTTEP社が主導する寄生虫感染症撲滅プログラムおよびインドネシアでの無料診療所
  • 「開発目標12:責任ある消費と生産」に焦点を当てた、ガモン社製造の建設用「グリーン」コンクリート
  • 「開発目標14:海洋と海洋資源の保全」の達成に向け、ヒルトン・ワールドワイドが2022年までに持続可能な水産物調達を公約

掲示板へのインプットが、SDGsの17目標を広く網羅していた点が歓迎される。サミット会期中、SDGsに関連する討議が続き、参加者が積極的に取組みを紹介・共有する場となった。9月のCSRアジア・サミットに続き、11月には香港にある大手企業がSDGs公開討議に参加し、企業戦略にSDGsを組み込む重要性について話し合った。スワイヤーとMTR(香港最大の鉄道路線会社),CLP(中電控股)の各社から、経営幹部がSDGsを最優先課題に据え、株主との協議でも議題にのぼった点が指摘された。各社のビジネスモデルの中核にSDGsを据えることで取組みに弾みをつけるべきだ、と大手企業が主張しているのは明るい材料である。多種多様なセクターの企業が、リソースや独創力、専門性を駆使してSDGsの推進に一役買うことができるのだ。

SDGsの中では、民間セクターの参画を戦略的に図ることを謳っている。これは民間セクターが主導権を握り、プラスの貢献をし、さらに地球規模の変革を推進する好機であるためだ。行動を呼びかけられた企業側も前向きに応えている。CSRアジアの年次調査レポート「取り組みを進めているのは誰か(Who Is Getting It Done)」の中で、専門家350人を対象に、企業が今後重点的に取り組んで行く開発目標はどれか、さらにSDGsの取組みを行わない企業はその理由について調査を行った。企業が取組みを計画している開発目標のトップ5は以下の通りである:

企業がSDGsに取り組まない理由としては、資金の不足、取組みの始め方に対する不安、さらに親会社からの指示待ちが挙げられた。CSRアジアの調査から、民間セクターがサステナビリティをますます重要視する中、早い段階でSDGsに取り組んだ企業はすでに成果を上げていることが分かる。しかし取組みをさらに進め、検討していく余地がある。先を見据えている企業には、資金不足やプロジェクトのスケールアップの可能性などの主要課題に対策を講じ、さらに早急にプロジェクトの実施に乗り出すことを勧める。

SDGsへの取組みにより、地球規模の課題への対策は大きく前進するだろう。業界内やセクター横断的な協働態勢のチャンスが高まり、収益がアップし、新規市場が創出され、そして何よりも全ての人々に影響を与えるグローバル問題への解決が図られることになる。事業モデルにSDGsを組み込むには、「これまで通りの」ビジネス形態からより革新的でサステナブルかつインクルーシブ(包摂的)なビジネス戦略への転換が求められる。民間セクターが率先してSDGsをビジネスモデルに組み込むことで、2030年までに開発目標を達成する可能性が高まるのだ。

執筆:アンジェリカ・クライン