スモッグがシンガポール企業全体に影響をおよぼす理由とは




2013年にスモッグがシンガポールを覆い尽くした際、私は同じ表題で記事を書いたが、残念ながら現状は悪化こそしていないものの、改善が見られない。2013年の記事で私は以下のように指摘した。

「再びシンガポールを覆い尽くしたスモッグによる企業への影響は、大気汚染による何週間にも及ぶ明らかな経済的影響にとどまらない。環境意識は最高潮に達している。インドネシアを非難する声は多いが、シンガポール政府は企業に対して環境への影響をつまびらかにするよう迫っている。環境意識の高まりと政府からの圧力により、シンガポールにある企業の事業全般が注視されるようになるだろう。」

予想した通り、2013年以来、企業活動に対する環境運動の高まり、さらに法案や情報開示要件の強化が見られた。さて、今回のスモッグにより、一層の取り組み強化が求められるようになるのか。

一例として、2014年2月、「国境を超えて東南アジアに広がるスモッグを終息させるには、あらゆる人びとが参画できるというの信念のもと、シンガポール在住の一般市民が集まり」発足したスモッグ防止のための国民活動(PM.Haze)がある。PM.Hazeとは「シンガポールの人びとがスモッグ防止に向けた地球規模の活動を牽引すべく、知識・価値観・具体策を示し、現在および将来の世代が澄み渡った空を手に入れることを目指している。シンガポール全国労働組合会議の青年委員会がPM.Hazeを支援している。」である。(詳細はpmhaze.orgを参照)。

PM.Hazeはスモッグについて意識を高め、企業方針に対してネット掲載も含めて公に解説を行っている。「エイプリル社(大手製紙会社)の持続可能な森林管理方針2.0へのコメント」が一例である。

PM.Hazeは国際環境NGOのWWFおよび同国のシンクタンクであるシンガポール国際問題研究所(SIIA)とも協働を図り、企業に対して「持続可能で煙害を出さない商品を望む」というメッセージを掲げるキャンペーンを展開している。現在オンラインで賛同者を募り(https://webreathewhatwebuy.com/)、支援者に対して「消費者として力を発揮しよう」と呼びかけている。

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金融セクターもまた、スモッグに取り組む団体の標的となっている。2013年に私が執筆した記事以降、WWFがこの5月に発行した報告書(a report from WWF)では、大半の地方銀行が融資を行う際に環境影響を考慮していない実態を地元の団体が問題視し、一般市民から署名を募っている点を取り上げている。「皆さんの預金を元手に、銀行は森林破壊と煙害に出資している危険性があります。融資が与える社会・環境面での影響を銀行が考慮するよう訴えかけていきましょう」(http://www.savingforgood.org/end-haze-lending/)と呼びかけている。今年シンガポールを覆ったスモッグによって、この活動への参加者が増えるかどうかは今後数週間以内に判明する。

当然のことながら、ソーシャルメディアでもスモッグ(英語ではhaze)の話題は頻繁に取り上げられている。

#sghaze
#haze
#Xthehaze

フェイスブックや署名活動、地元・国際メディアによりスモッグについての意識が高まっているが、青空を取り戻す時にはこれらの活動も下火となるだろう。しかし注目すべきはこれらの取り組みにより、環境に対する意識がかつてないレベルまで上がることである。野焼きがこの環境災害を直接的に引き起こしている。嗅覚、味覚、感覚で感じ取ることができる。シンガポールの人びとは、企業が取った行動で健康と経済が打撃を受けた脅威を忘れないだろう。責任の所在と関与の詳細を明らかにし、問題解決に向けて何がなされているか、情報を求めることになる。

2013年に私が執筆した記事以降、シンガポール議会は2014年に越境煙害法(Transboundary Haze Pollution Act 2014 )を通過させ、近隣国での森林・泥炭地火災によりシンガポールに深刻な大気汚染を引き起こした企業・個人に対して法的責任を問うとした。シンガポール国家環境庁によると、バラクシュナン環境長官の要求に応じ、インドネシアのシティ・ヌルバヤ環境・林業大臣が出火を招いた疑いのあるインドネシア側の企業名を、現場での確認・検証が取れ次第、共有することに合意した。今後は同法律が施行されているか、さらに対象となった企業はどこかを注意深く見ていきたい。

インドネシアは昨年9月、東南アジア諸国連合(ASEAN)の越境スモッグに関する協定を批准した。同協定は2002年に調印したが、インドネシアはASEAN加盟10か国の中で最後に批准を果たし、ブルネイ・ミャンマー(原文はビルマ)・カンボジア・ラオス・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ・ベトナムと足並みをそろえた。各国は協働し、法整備を図り、煙害を食い止めることが期待される。譲歩を引き出し、計画を練り、さらに企業が情報開示を一段と進める過程は時間を要する。所有権の透明性を確保する「ワン・マップ・イニシアチブ」のような取り組みが必須である。透明性ある取り組みが煙害を解決し、他の業界にも広がるだろう。

汚染を引き起こしうる主体を特定し、個々の企業に対し行動を起こすこととは別に、企業全般への意味合いがある。

スモッグ防止への取り組みを通し、国家が新たに企業のあり方を問うようになっている実態が浮かび上がる。政府が持続可能ではないビジネスを問題視し、声を上げ始めている。シンガポールの人びとは、経済成長を望むものの、企業に対し規律ある行動と、環境への影響に責任を持つよう働きかける消費者であるといえよう。企業は 持続可能なビジネス戦略を実践に移すことが求められている。

執筆:エリン・ライオン